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僕が目覚めてから、自分の中に別の「何か」がいる感覚がしていた。
それが僕の友人、アンジュ・ヨーテだということは、先生の話を聞けばなんとなく予想できた。肉塊の狼人間という怪物に噛まれ、死してなお生き続けていた彼女。僕が自分と道連れに、やっとのことで本当の「死」を迎えられたかと思ったが……こうして僕の中にまだいるようだ。
「どうだいライカ君。前みたいに撃てそうかい」
「撃つのは問題ありません。ただ……」
そんな僕は、久々に拳銃を構えていた。
かつては銀の弾丸を装填し、多くの狼人間を倒したこの銃。改めて使ってみようと試したのだが、重大な問題が発覚した。
「今の僕の体だと、銀の弾丸に触れなくって……これじゃ一発撃っても、次の弾が入れられないんです」
「ふぅむ。確かにあれは狼人間の最大の弱点だからね。私も触れないんだから、君も同じなのは当然か」
先生は頭の後ろで腕を組んだ。
「自分の血を弾丸に変えるあれは? 今はもう出来ないのかい? 」
「駄目です。やっぱりあれは、肉塊の力が無いと……」
肉塊に噛まれた時の僕は、自分の血液を銀の弾丸に変えることが出来た。
体がバラバラになり、先生に噛まれて生き返った今となっては、その力は見る影もなかった。今の僕は、前よりは普通の人間寄りの怪物だ。
「それじゃあなんだい。銀の弾丸も使えない。肉塊の力もない。ひょっとして君、前よりも弱くなっちゃったのかい? 」
先生がにんまりしながら言う。悪気はないと思いたい。
「その言い方はないでしょう……あぁでもほら。僕も狼人間になったんだから、何か特別な力があるかもしれませんよ? 」
「うーんどうだろ。私達が噛み付いて生まれた奴って、そこまで強力な力をもっていないのが多いけど……そうだね。念の為試してみようか」
そう言うと、先生は「着いてきな」と手招き。
若干の期待を胸にして、僕は歩き出すのだった。
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