【1】虹色と犬

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 僕が目覚めてから、自分の中に別の「何か」がいる感覚がしていた。  それが僕の友人、アンジュ・ヨーテだということは、先生の話を聞けばなんとなく予想できた。肉塊の狼人間(ルー・ガルー)という怪物に噛まれ、死してなお生き続けていた彼女。僕が自分と道連れに、やっとのことで本当の「死」を迎えられたかと思ったが……こうして僕の中にまだいるようだ。 「どうだいライカ君。前みたいに撃てそうかい」 「撃つのは問題ありません。ただ……」  そんな僕は、久々に拳銃を構えていた。  かつては銀の弾丸を装填し、多くの狼人間(ルー・ガルー)を倒したこの銃。改めて使ってみようと試したのだが、重大な問題が発覚した。 「今の僕の体だと、銀の弾丸に触れなくって……これじゃ一発撃っても、次の弾が入れられないんです」 「ふぅむ。確かにあれは狼人間(ルー・ガルー)の最大の弱点だからね。私も触れないんだから、君も同じなのは当然か」  先生は頭の後ろで腕を組んだ。 「自分の血を弾丸に変えるあれは? 今はもう出来ないのかい? 」 「駄目です。やっぱりあれは、肉塊の力が無いと……」  肉塊に噛まれた時の僕は、自分の血液を銀の弾丸に変えることが出来た。  体がバラバラになり、先生に噛まれて生き返った今となっては、その力は見る影もなかった。今の僕は、前よりは普通の人間寄りの怪物だ。 「それじゃあなんだい。銀の弾丸も使えない。肉塊の力もない。ひょっとして君、前よりも弱くなっちゃったのかい? 」  先生がにんまりしながら言う。悪気はないと思いたい。 「その言い方はないでしょう……あぁでもほら。僕も狼人間(ルー・ガルー)になったんだから、何か特別な力があるかもしれませんよ? 」 「うーんどうだろ。私達が噛み付いて生まれた奴って、そこまで強力な力をもっていないのが多いけど……そうだね。念の為試してみようか」  そう言うと、先生は「着いてきな」と手招き。  若干の期待を胸にして、僕は歩き出すのだった。
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