【1】虹色と犬

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「あのねぇラピスちゃん。こんな化け物、流石にワシも嫌だよ」  ジャッケル・ゴルドカラーは、僕を舐め回すように見渡した。  カジノ「Romlus(ロムルス)」のオーナーである彼は、いつもと変わらず先生にべったりとくっ付いている。僕には触れようともせずに、大袈裟にぶるぶると震えていた。 「そう言うなよ。ライカ君だぞ」 「どう考えても違うじゃないの。外面は似てるかもしれないけど、オーラっていうの? 雰囲気っていうの? その辺がまるで違うって分かるよ」  僕が自分の正体を明かす前に、ジャッケルさんは勘づいていたようだった。 「こればっかリは嫌よ。いくらラピスちゃんの頼みでもね」 「見方を変えてみろよジャッケル。ライカ君が狼人間(ルー・ガルー)になったってことは、君がもふれる奴が一匹増えたってことだぞ」 「それは悪い話じゃない……いやいや。ワシはラピスちゃんが良いんだ。他の犬っころを出されたって、そっちに浮気するのは許されないんだぞ」    何を言っても通用しない。  ジャッケルさんがもつ薬「月の光」を使えば、狼人間(ルー・ガルー)は満月の時以外でも変身出来る。それを使って僕の能力を調べようと思ったのだが、この調子では不可能かもしれない。 「頼むよ。君が駄目だとツキの所に行かないといけないんだよ」 「ツキ? じゃあそっちに行けばいいじゃないの」 「あいつにあまり恩を売りたくなくてね。一応敵だし」  先生も引き下がろうとしない。 「すみませんジャッケルさん……迷惑はかけませんから、どうかお力を」 「だってチミ、前のライカ君じゃないんだろ。前の君には色々と世話になったけど、今は違うっぽいしなぁ……協力する必要ないよなぁ」  ジャッケルさんはそう言うと、帰ってくれと手を振った。 「そうかそうか。それじゃもう二度と私の尻尾を触らせてあげないぞ」 「うげっ」 「耳も首も背中も駄目だ。私のもふもふした部分全てに触ることを禁ずる」 「うおぉ」 「おまけに君の大好きな罵倒も二度としてあげないぞ。いいのかい」 「うぅ、ワシを殺すつもり? ……あーあ分かったよ。今日だけね……」  ジャッケルさんは力を失ったかのように崩れ落ちた。  そこまでして先生を触りたいという価値観が、僕には今でも分からない。  きっとこれからも分からないだろうし、知りたいとも思わないけれど。
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