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「あのねぇラピスちゃん。こんな化け物、流石にワシも嫌だよ」
ジャッケル・ゴルドカラーは、僕を舐め回すように見渡した。
カジノ「Romlus」のオーナーである彼は、いつもと変わらず先生にべったりとくっ付いている。僕には触れようともせずに、大袈裟にぶるぶると震えていた。
「そう言うなよ。ライカ君だぞ」
「どう考えても違うじゃないの。外面は似てるかもしれないけど、オーラっていうの? 雰囲気っていうの? その辺がまるで違うって分かるよ」
僕が自分の正体を明かす前に、ジャッケルさんは勘づいていたようだった。
「こればっかリは嫌よ。いくらラピスちゃんの頼みでもね」
「見方を変えてみろよジャッケル。ライカ君が狼人間になったってことは、君がもふれる奴が一匹増えたってことだぞ」
「それは悪い話じゃない……いやいや。ワシはラピスちゃんが良いんだ。他の犬っころを出されたって、そっちに浮気するのは許されないんだぞ」
何を言っても通用しない。
ジャッケルさんがもつ薬「月の光」を使えば、狼人間は満月の時以外でも変身出来る。それを使って僕の能力を調べようと思ったのだが、この調子では不可能かもしれない。
「頼むよ。君が駄目だとツキの所に行かないといけないんだよ」
「ツキ? じゃあそっちに行けばいいじゃないの」
「あいつにあまり恩を売りたくなくてね。一応敵だし」
先生も引き下がろうとしない。
「すみませんジャッケルさん……迷惑はかけませんから、どうかお力を」
「だってチミ、前のライカ君じゃないんだろ。前の君には色々と世話になったけど、今は違うっぽいしなぁ……協力する必要ないよなぁ」
ジャッケルさんはそう言うと、帰ってくれと手を振った。
「そうかそうか。それじゃもう二度と私の尻尾を触らせてあげないぞ」
「うげっ」
「耳も首も背中も駄目だ。私のもふもふした部分全てに触ることを禁ずる」
「うおぉ」
「おまけに君の大好きな罵倒も二度としてあげないぞ。いいのかい」
「うぅ、ワシを殺すつもり? ……あーあ分かったよ。今日だけね……」
ジャッケルさんは力を失ったかのように崩れ落ちた。
そこまでして先生を触りたいという価値観が、僕には今でも分からない。
きっとこれからも分からないだろうし、知りたいとも思わないけれど。
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