13人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
「……えー、本当はライカ君なの。急に萎えてきた」
事情を説明したら、ジャッケルさんはあたしに飛び付くのをやめた。
この時点で彼の首には痛々しい痣が出来ていたが、全く痛がる様子も見せない。ここまで先生の攻撃を受けても平気な奴なんて、それこそツキや肉塊くらいしか思い付かないのだが。
ーーあぁいう人なんだよ。ごめんねーー
ふと頭の中で声がした。
「あれ、ライカ? 」
「おっとアンジュ。どうした? 」
辺りを見渡すが、声の主の姿は見えない。
それも当然だ。だったあたしの体はライカと共有しているのだから。
「今ライカの声がしたような……」
ーー君の中から喋っているんだよ。なんか変身している間は話せるみたいーー
「……もしかしてさ。交互に入れ替わる、とかいけそうじゃない? 」
側から見たら独り言なのは百も承知だ。
それでもライカと会話するには、これしか手段がないから仕方ない。
ーーやってみよっかーー
するとあたしの体が光り始めた。
意識が眠るように遠くなって、そしてーーーー
ーーーー僕に戻った。
「うわっ、本当にライカ君じゃん……ラピスちゃんがワシを近づけたくないから、適当なこと言ってるのかなって期待してたのに。微かな希望も崩れた」
「ジャッケルさん、アンジュにはやめてくださいって……」
僕にもアンジュの時の記憶は残っていた。
どうやらこの体は、肉塊のように一方的に相手を支配する訳ではなさそうだ。互いに視界や記憶を共有し、同意があれば入れ替わる。戦いに使えそうな力ではないが、「アンジュが生きていられる」という点だけでも喜ばしい。
ーーねね。もう一度あたしに変わってよーー
「分かったよ。はい」
ーーーー再びあたしに戻った。
ライカが言ったことも全て覚えている。肉塊の時とは違う、なんだか安心できる入れ替わりだ……コロコロと変わるあたし達に、ジャッケルさんは困惑しているみたいだけど。
「……もしかしたらこれ、結構使えるかもしれないぞ」
すると先生が、何かを思いついたように笑った。
最初のコメントを投稿しよう!