【1】虹色と犬

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「……えー、本当はライカ君なの。急に萎えてきた」  事情を説明したら、ジャッケルさんはあたしに飛び付くのをやめた。  この時点で彼の首には痛々しい痣が出来ていたが、全く痛がる様子も見せない。ここまで先生の攻撃を受けても平気な奴なんて、それこそツキや肉塊くらいしか思い付かないのだが。 ーーあぁいう人なんだよ。ごめんねーー  ふと頭の中で声がした。 「あれ、ライカ? 」 「おっとアンジュ。どうした? 」  辺りを見渡すが、声の主の姿は見えない。  それも当然だ。だったあたしの体はライカと共有しているのだから。 「今ライカの声がしたような……」 ーー君の中から喋っているんだよ。なんか変身している間は話せるみたいーー 「……もしかしてさ。交互に入れ替わる、とかいけそうじゃない? 」  側から見たら独り言なのは百も承知だ。  それでもライカと会話するには、これしか手段がないから仕方ない。 ーーやってみよっかーー  するとあたしの体が光り始めた。  意識が眠るように遠くなって、そしてーーーー  ーーーー僕に戻った。 「うわっ、本当にライカ君じゃん……ラピスちゃんがワシを近づけたくないから、適当なこと言ってるのかなって期待してたのに。微かな希望も崩れた」 「ジャッケルさん、アンジュにはやめてくださいって……」  僕にもアンジュの時の記憶は残っていた。  どうやらこの体は、肉塊のように一方的に相手を支配する訳ではなさそうだ。互いに視界や記憶を共有し、同意があれば入れ替わる。戦いに使えそうな力ではないが、「アンジュが生きていられる」という点だけでも喜ばしい。 ーーねね。もう一度あたしに変わってよーー 「分かったよ。はい」  ーーーー再びあたしに戻った。  ライカが言ったことも全て覚えている。肉塊の時とは違う、なんだか安心できる入れ替わりだ……コロコロと変わるあたし達に、ジャッケルさんは困惑しているみたいだけど。 「……もしかしたらこれ、結構使えるかもしれないぞ」  すると先生が、何かを思いついたように笑った。
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