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 異世界転移の利点は、元の世界のしがらみと縁が切れる事だ。なのに、一番面倒な縁がくっついてきている。  職場の中でも極めて面倒だった3人組が、作り物の笑みで誘って来た。 「和久さんも一緒に働きましょう」 「せっかくの異世界なので、冒険者やります」  君らと働かなくていいなら、職種はなんだっていい。あんたらと一緒に働いたら、陰で仕事押し付けられるんでしょ。失敗の責任もきっとこっちにもってくるわよね。  それを3対1でやられたら、すべて珠莉が悪者にされるのはわかりきっている。 「1人じゃ危ないよ」 「怪我でもしたらどうするの? この世界には皆保険制度も傷病手当もないの。わかっている?」  わたしたちとっても心配しているのと、善性を全面に出してきた。さすが、どちらも仮面夫婦よい父やよい母を演じているだけのことはある。  きっと、あなたたちではない誰かに言われたなら、絆されていただろう。  でも、あなたたちと共に働いたら日々が、断固拒否を選ばせる。  フライトに町を移動するなら冒険者ランクをあげた方がいい。ダンジョンボスを討伐しているからランクを上げられると勧められて冒険者ギルドに戻ったら、面倒な人に捕まってしまった。  冒険者ランクが上がるのは本当で、その手続きが終わるまで移動できないのがツライ。 「そういえば、和久先輩、旅行が趣味でしたね」  嫌いではないが、年一くらいの旅行を趣味と答えてしまっていいのだろうか。まあ、今はいいとしよう。 「せっかくだからいろいろ観光したいわ。目的のない気ままな1人旅。会社にいたらできなかった事だから、いい機会だと思う事にするわ」  一応、醤油、味噌、みりん、料理酒という目的はあるが、そんな余計なことは言わない。1人旅行と告げて、万が一の同行も拒否する。  仕事じゃなければ、ダブル不倫で社内三角関係の3人になんて関わりたくない。  逆ハー中学生もハーレム高校生も人間関係が面倒そうだし、他人の増愛劇に巻き込まれたくなかった。  もう、アラサー負け組おひとりさまでいいから、あんたらの昼ドラにキャスティングしないでくれ。  だいたい、派閥調整で昇進しただけの仕事できない上司に好意なんて持てない。どうせ、不倫と社内三角関係に酔っているだけでしょ。  その証拠にダブル不倫の2人はどっちも離婚する気なんてないし、3人目の女として割り込んだ後輩は社外に男がいる。  おひとりさまには、あなたたちの高度なお遊びにはついていけないの。誘ってくれるな。  珠莉は手続きが終わるまで、耐えに耐えた。
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