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 冒険者ランクがEランクになった。  2ランクアップだが、もう少し経験や活動実績があれば、Dランクになれたらしい。  ランクの違いによる説明を質素な個室で受けたが、どうにも理解しきれなかったらナビゲーターが解説してくれた。  Gランクはほぼ信用がない。登録した町で一応の身分証になっているだけ。Fランクが保険証くらいで、Eランクが免許証くらい。  国内ならだいたい通用する身分証だが、国外を目指すならパスポート並みの信用が得られるDランク以上が望ましいそうだ。  何か言いたいが、直接的な表現を避けるせいで、どうして欲しいのかわからない冒険者ギルド職員の言葉をナビゲーターがまとめてくれる。 『女の1人旅は危険だよ。護衛に高ランクの冒険者と一緒に行動してほしい。高ランクと冒険者と一緒ならDランクになっていなくても国外に出やすいよ』  と、いうことになるらしい。  異世界人には言語翻訳スキルがあるが、訳しきれないことも多々あるそうだ。比喩的表現や詩的な表現はスキルでは対応しきれない所があるらしい。 『踊る野菜ダンジョンはマヨネーズとケチャップがレアドロップするよ』  ケチャップはなくてもいいが、マヨネーズは欲しい。作り方はしっているが、作れるとはかぎらないし、自作するとだいたい美味しか、驚くほど不味いできになる。  普通に美味しく食べられる物が欲しいので、明日からもダンジョンへ通おうと思う。 「ダンジョンに潜るだけてなく、ドロップアイテムを冒険者ギルドにおろしていただかないとランクは上がりません」  冒険者ギルドの最大の仕事が、ダンジョンで入手できるアイテムの買取販売だ。ダンジョン外での採取や護衛依頼なんてものは冒険者ギルドからすれば副業になる。 「あとですね、夜は町の中に泊まっていただきたいです」 「宿に泊まる金銭的余裕はないので、できません」 「外は危ないです。安い宿もありますから」 「そういうところは相部屋ですよね。知らない人と一緒には寝れないです」  人のいない外より、安全かどうかわからない人のいる室内の方が危険だ。駆け出し冒険者って、だいたい若いし、子どもの集団と一緒というのもつらい。 「昨日が大丈夫だったからといって、今日が大丈夫だとは限りません。寝ているところを魔物に襲われることだってあるんです」 「そういうの防ぐスキルあるので、外の方が安全です」  お互い妥協できないでいると、別の職員が許可を取りに行ってくれたらしい。夜間、冒険者ギルド所有の訓練に使う広場を無料で貸すので、そこでスキルを使って欲しいと頼まれた。  ここが妥協点だと同意する。  日帰りで戻ってくる冒険者が増える時間になったこともあり、完全に日が暮れるまで町を散策する。下手に冒険者ギルドにいて、同郷の異世界人たちに絡まれるのは避けたかった。
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