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「組織から抜けたいだけだから、お姉さんが新しい主になって」
「他人の面倒までみる余裕はないわ。それ、利益じゃなくて負債だから」
『その人組織の交渉役兼男娼だよ。自分自身に価値があると思っていたようで、拒否されると考えてはいなかったみたいです』
男娼って、性病大丈夫かしら。
『現時点で発症している病気はありません』
「衛兵に引き渡したあと、売り払ってもらえばお金がもらえます。売り飛ばしましょう」
フライトが熱心に売る事を主張してきた。
「そんな男を飼うくらないなら、私を飼いましょう。貯金もあります。金銭的負担はかけません。必要なら稼いでも来ます」
えっ、飼われるのがこの世界の常識なの?
『違うから。この人がたち特殊だから、常識にしないで!』
ナビゲーターは相変わらず無表情だが、言葉には感情がのるようで、泣がはいっていた。
そんな特殊な人間いらないわよ。むしろ縁を切るべきではないかしら。
悩んでいると大通りから衛兵が入ってきた。
「フライトさん、後は任せます」
珠莉は逃走した。
逃げても向かう先は冒険者ギルドだが、これ以上特殊な人の相手をしてメンタルを削りたくはない。
冒険者ギルドは夜でもカウンターが開いており、ダンジョンの情報が欲しいが、どうしたらいいか訊ねる。
無料公開情報と有料公開情報があり、無料公開情報は受付待合ロビーで閲覧することができた。踊る野菜ダンジョンについての情報もあったが、さほど多くはなかった。
この町周辺以外のダンジョン情報になると有料情報らしい。
『位置情報や地図が軍事情報に該当するため、無料公開できないよ。お金を払っても公開される情報は冒険者ランクによって制限もあります』
冒険者ランクAの価値を考え、利用するのはいいかもしれないとは思う。思うが、利用する前にメンタルがやられそうな気もする。
冒険者ギルドの公開情報は冒険者ランクに依存しているが、何事にも例外があり、異世界人はそれに該当していた。異世界人だからランクに関係なく開示できない情報もあれば、その逆もある。
受付してくれた人より、地位が高そうな人が出てきて個室でお話しすることになった。
「元の世界の同僚とは仲が悪いのでしょうか?」
「悪くないですよ。悪くしたら仕事に影響でますから」
にっこりと珠莉は笑う。
「仕事でなければ関わりたくないだけです」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
「理由、話すまでしつこそうですね」
にこにこと応じていると、わざとらしいため息をつかれた。
「こちらの事情を先にお話しさせていただきます」
キリッとした顔を作ると、男は話しだした。
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