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酒乱による被害は拘束された男3人。ただ、賢者の拘束だ。解けるものがいないので消えるのを待つしかない。
それでも賢者がやらかした事案としては軽微だ。酒飲んで暴れる冒険者なんて珍しくもない。
冒険者ギルドとしては異世界人だから記録に残しはしても、罰則を与えるような案件ではなかった。
積極的にこの世界の人と交流を持ってはいないが、賢者はこの世界に合わせて生きようとはしている。王侯貴族には関わろうとする様子はなく、ひたすらダンジョンで食材を求めていた。
他の異世界人たちの様子から、この世界の食事事情が元の世界より悪いらしいとは知れている。その不満を解消するように他の異世界人たちはアイテムボックスの食材を消費していた。
アイテムボックスの物資は有限だ。過去にはその物資を巡り異世界人同士で争ったこともある。
山が消し飛び、砂漠やら湖ができる規模だったらしいだけに、異世界人たちには争わないでいてもらいたい。
「賢者は今のところ問題ないでしょう」
「Aランクの冒険者と引き離して問題が起きないなら、警戒水準を下げられます」
「酒乱で暴れて死者も破壊された物もないなら、心配いらないと思いますが」
とある冒険者ギルドと一室で、異世界人についての情報が集められ、精査されていた。
「聖女の取り巻きの引き離し工作は順調です」
「聖女本人は冷遇されていると語る王子様に夢中か」
「王子が下剋上狙うことはないよな?」
「魅了耐性の高さで選ばれた方だからな。聖女に操られるより聖女を操らないかが心配だ」
「欲を出せば兄王子たちの誰かに暗殺されるとわかっているから、よほどの勝算がなければ動かない」
「しばらくは様子見だな」
「勇者の方はどうだ?」
「こちらは取り巻きを引き剥がしきれていないですね。勇者本人はお姫様に興味があったようですが、取り巻きに潰されました」
「自己申告魔法師が偽装の可能性が高いです」
「さすがに同時期に賢者2人はないと思いますが」
「大魔法師か魔導士あたりがあやしいか」
「偽装している子は扱いが難しいんですよね」
「暴いただけで恨まれる可能性もあるからな」
「偽装疑惑のある子以外は時間をかければ引き離せそうですし、姫様には引き続き頑張ってもらいましょう」
「現状、監視継続しかないか」
力ばかりあって、精神が子どもの異世界人たちに誰ともなくため息をつく。感情的に善悪を決めて、暴れられたら迷惑でしかない。
お姫様に恋をして、結婚を反対されたら悪の王にされたなんて歴史もある。
「ギルド職員希望者たちはどうなっている?」
「異世界人としては問題ないかと」
「職場恋愛は活発になってます」
「スキルは使っていないんだろ?」
「使っている形跡はまったくないのに、拗れてます」
「異世界人でないギルド職員が殺傷事件を起こさないか心配ではありますが、異世界人組はそういう行動は取りそうにないです」
「自分の恋人や結婚相手は会わせたくないという意見を出している方もいますね」
賢者が1人離れて行動した気持ちが、理解できそうだった。
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