4

5/10
前へ
/92ページ
次へ
 男だけど、美人さんがにこにこ食べている姿はかわいい。ちょっと幼くも見える。 「お姉さん、これ錬金術じゃないと作れない?」 「オーブンとそれ用の道具が有ればできるよ。元の世界錬金術なんてないから」 「作り方教えて欲しいです。自分で作りたいです」 「道具は形はわかっているから作れると思うわ。ただ材料がないのよね。忘れられた倉庫で入手できそうだけど」 「ボク、頑張ります」  やる気になってくれたのはいい事だ。これならきっと毎日でも付き合ってくれる。  頭がぼんやりしている時は忘れていたけど、ネイトは奴隷だ。あんまり1人でふらふらさせるのは良くない。何しろ殺されても器物破損扱いになる存在だ。  主のフライトがいないのだから、珠莉が擁護しなくてはいけない。擁護できなかったら、即奴隷印を除けよう。あとは異世界人、この世界のことわからないとでも主張しておけば冒険者ギルドが仲裁に出て来てくれるはず。  そのくらいの面倒を見てくれるくらいには、彼らは賢者という職業を警戒していそうだった。 「お姉さん、他にもお菓子作れる?」 「作れるわよ」  学生時代にバレンタインとかクリスマスなんかのイベントごとで浮かれて作ったのとか、調理実習で作ったのとかならできそう。  プリンなら茶碗蒸しみたいに蒸せばいいから今からでも作れそう。でも、今はこれ以上お菓子はいらない。 「道具が準備できたら教えてあげるわ」 「本当? やった」  どうやらネイトは甘い物が好きらしい。顔を上気させて喜ぶ姿は、かわいい。これが萌というものだろうか。見守りたい気分にさせられた。  こういうのが男心とか、母性なんかをくすぐるのだろう。自分にはない物だ。せめて、ここで嫉妬できれば、何か違う気もするが、そんな感情の動きは見つからなかった。  これが推しかな。 『もう考えるのはやめて。あなた疲れているのよ。ゆっくり休もう』  そうかな。  納得いかないままわずかに首を傾げる。 『拗らさせたおひとりさまが考えてもダメな結果にしかならないから、やめて〜』  なんか、ナビゲーターが必死に止めてくる。 『何か考えたいなら、明日行くダンジョンのことにしよう』  それは有益な提案だ。ネイトに集めた情報を教えてもらうことにする。  7層しかないから、ダンジョンボスを倒した後にしか転移魔法陣が使えないとか、パーティーごとに隔離されるダンジョンだから他の冒険には会わないとか、つらつらと語って教えてくれた。 「隔離ダンジョンは初めてだわ」 「モンスターや宝箱の取り合いにはならないけど、助けたくれる相手もいない。回復薬は多めに持って、予備の武器も持っていけって言われたよ」 「回復薬、暇な時に作ってみたけど、まだ使ったことないのよね。武器は持っているだけで使わないし」  魔法オンリーで、遠距離から一方的に狩っているだけだから、怖いとも思わない。モンスターハウスも効率がいいくらいにしかおもわないし、倒せないと思ったボスモンスターもいなかった。  周回していればレアボスもでたがらどうということはない。ドロップアイテムを得るための作業でしかなかった。  明日も、体調さえ整えば問題はない。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加