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宿で朝食を食べてから、歩いて忘れられた倉庫ダンジョンへ向かう。腕試しに訪れるEランク前後の冒険者は多いが、あまり人気のあるダンジョンではなかった。
モンスターは魔物でも見かけるようなよくいる狼系とかコウモリ系とかゴブリンなのだが、ドロップアイテムがよくない。
折れた槍や割れたグラス。錆びた剣に穴の空いた鍋と、そのままでは使えないくらいアイテムが多かった。
そのくせこんな浅いダンジョンでは手に入らない宝飾品かドロップすることもあり、一攫千金を求めてやってくる冒険者もいる。
今回のダンジョン探索は珠莉がモンスターを倒し、ネイトがアイテムを拾う役になっていた。壊れたアイテムシリーズは素材として使える珠莉とは違い、ネイトの欲しいものではない。換金性も悪いことを思えば、アイテム拾いのお手伝いをしもらい、お小遣いとお菓子作りの道具で雇った扱いだ。
「壊れたアイテム、武器や防具だけじゃなく、農具シリーズもあるみたいね」
「割れたお皿なんて素材になる?」
「持ち運びにはこまらないから、いるかどうかはダンジョンを出てから考えるわ」
「了解。拾える物は全部拾います」
偶数層にあるモンスターハウスに毎度引っかかりに行き、数を集める。5層で宝箱をみつけたが、出てきたのはくすんだ食器セットだった。
とっても大きな鞄に整頓されて入っているが、フルコース用のカトラリーと食器が12セット。
当たりか外れか珠莉は悩んだ。
『当たりだよ。銀器だから、磨けば光るよ』
たぶん数が多すぎて磨かないし、使わない。でも、金策が必要になったら磨いて売るだろう。それまでナビゲーターに預ける。
『外れあつかいなんだね』
フルセット揃っている物は何となくバラして使いにくい。素材としても、バラして使わないだろう。けれど、全部いっぺんに使うなら、やるかもしれない。
7層ということもあり、昼前にはダンジョンボスを倒して終わった。こういう隔離ダンジョンはダンジョンボスがリポップするのに待ち時間はない。ただ、帰り用の転移魔法陣しかないので、また1層からの探索となる。
日に2回まわるにはドロップアイテムの魅力が低い。今回のドロップアイテムでどの程度の道具が作れるか試してから、今後の予定を決める事にする。
のんびりと歩いて町に戻り、お昼ご飯を食べに食堂に入る。ナビゲーターおすすめの食中毒の心配がない衛生的な店だ。
昼には遅い時間になっていたが、まだ混み合っており、なかなか注文できないでいたらネイトが頼んでくれる。
「恋人さんかい?」
「お姉さんです」
近くに座っていたおじさんの相手を、ネイトは愛想良くしていた。
「お姉さん、ちょっと今お疲れ気味で」
愛想もなく、会話に加わらない珠莉のフォローまでするできた子だ。でも、実際にこんなできた弟がいたら嫌気がさしそう。
『素直に感謝しよ』
あきれたようにナビゲーターが注意してきた。
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