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午前中、忘れられた倉庫ダンジョンへ行く。午後からネイトはクレープ作りの練習て、珠莉は道具作り。
珠莉は3日で飽きた。
「同じ材料で、手でつかめるくらいの硬さにしたら、クッキー焼けるよ」
錬金鍋で見本を作り、魔道具のオーブンを提供する。ネイトには今後もお菓子作りをがんばってもらう事にして、珠莉は別行動を選ぶ。
町の散策にオープンカフェでおやつ。晩秋らしいが、もう冬といっていいほど寒い。外歩きは楽しめなくて、防寒具を買いに行く。
見た目と機能性を求めると高い。
素材があれば作れるそうなので、午後もダンジョンへ行く事にする。外よりダンジョンの方が暖かいのも決め手だ。
『アイテムボックスの中にもあるよ?』
風邪は引きたくないからその甘い誘惑にはのる。けれど、自分でどうにかできることはどうにかしていかないと、将来にとっておけない。
たぶん、身一つで組織を抜けてきたネイトも防寒服を持っていないはず。
この辺りだと水鳥の楽園と勇敢羊の広場という2つのダンジョンが、防寒具や防寒服及びその素材をドロップする。飽きないように1日交代で午後から向かう。
水鳥の楽園が72層で、10層ごとにフロアボスがいて、転移魔法陣がある。他の冒険者とも遭遇するダンジョンで、1日に攻略するのは10層分だけにした。
勇敢羊の広葉は10層しかないが、1層あたりが広く全てのフロアにボスがいる。フロアボスを倒すと転移魔法陣が使えるので、上手くダンジョンボスを見つけられたら日に2層攻略するが、ダメなら1層で引き上げた。
どっちも7日でダンジョンボスまで倒せので、翌日の午後はお休みにする。そんな事を繰り返していたら、フライトが前払いしてくれていた期日は過ぎたので、1週間分支払った。
ネイトの奴隷印が主持ちのままになっているので、死んではいない。生きているなら、ネイトのこともあり、もう少し待とうと思う。
どうやら、ネイトにとってはクッキーの方が簡単だったらしい。クレープは薄く焼くのにまだ苦労している。
「今日は散策いいの?」
「もう寒いからね」
そういえば、ダンジョンへ行っていたの教えてなかった。
「冬用の服、いるよね」
「とりあえず、マント作った。着てみて。使用感が知りたい」
フード付きで耐寒発熱仕様。モコモコダウンジャケットを作るつもりだったが、物理的に暖かくなるより魔術的な方が動きやすくて暖かいとナビゲーターに教えてもらった。
「それで、ちょっとお金使ったから金策に明日は冒険者ギルドに行こう」
「このマント?」
「ううん。ここの宿代」
「あっ、そうだね。ここ安いところじゃないや」
困った顔をしながらネイトはクッキーをつまむ。
「最近手に入れた素材で売れそうなのあんまりないのよね」
「お姉さん。冒険者は依頼を受けてダンジョンへ行くものだよ? ダンジョンに行ってあまり物を売るのは一般的ではないから」
「そういえば、依頼は受けたことないわ」
「ボクもないから、明日は一緒に探そう」
ネイトは断りにくい話運びをしてくる。
「いいのがなかったら、売値の高いものがドロップするダンジョンへ行きましょう」
都合のいい依頼が都合よくあるとはかぎらない。ダメだった時の事も考えておく。
「魔石なら確実に買い取ってくらるよ?」
まるで、溜め込んでいるでしょうと問われているようだ。
「魔石があったから、オーブン作れたのよ」
「それなら仕方ないね。次はケーキの作り方教えて」
「それは泡立て器の材料を集めてからよ。クレープより卵混ぜないといけないから」
ネイトはがんばるとは言わなかった。新しい魔道具ができるのを待つらしい。
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