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町に入ると、迷う事なく冒険者ギルドへ向かう。少し混み合っていたから、人が減るのを待ってカウンターへ向かった。
慣れてない人というのは時間がかかる。そんな人が混み合う時間にいるのは、手続きする方も背後で待つ事になる人にも負担だ。
珠莉にしても、そんな事でムダに恨まれたくもない。
「常設依頼の買取お願いします」
年季が入った背もたれのない四角いイス。ガタガタと揺れるが、座れなくはない。
冒険者カードを出し、ナビゲーターに預けていた採取物を出してもらう。
「あー、異世界の方でしたね」
薬草の束をだしていく。束といっても、1束10本だ。買取基準がそうなっていたので、ナビゲーターの指示でそうした。
「丁寧に採取されてますね。これなら問題なく買い取りできます」
1種5束で1件の依頼達成となり、6回の依頼達成分のお金をもらう。依頼1回、銅貨5枚。これでも新人育成の為に高く買い取りしてくれているらしい。
この世界流のセイフティーネットで、貧困層支援だ。薬草採取だけでも最低の食事を1日分できるようにしている。
他には町の清掃やご遺体が出れば墓地の穴掘りなんていうのもあるらしい。何かやっていれば、食事はできるようだ。
冒険者ギルドへ出て市場へ向かう。お金はナビゲーターに渡した。
元の世界でも、海外旅行先ではすりの被害に遭う。異世界だからと自衛できる気がしなかったので、取られそうな物の管理は任せることにした。
市が出ているのは広場の半分ほどで、扱っている物は食材が多い。すでに朝のピークは過ぎており、珠莉は見ものして歩く。
『地方都市としては賑わっている市です。治安もいい方だよ』
それでも、軽犯罪は日本より多そう。だって、そこかしこに市の商品ではなく、人を獲物を見る目で見ている人たちがいる。
どうせ、カモに見えてるわよ、クソッ。
『女の子がそういう言葉を使うのは良くないです』
思考を読んでくるナビゲーター、たまにオカンになる。あと、女の子って歳でもないのでやめて下さい。
市は食材を置いている店もあるが、その場で食べられる屋台も多かった。こういうの、衛生面はどうなんだろう。
海外旅行先のガイドさんに日本人は絶対食べるなと言われたことがある。地元の人、大丈夫。日本人見るだけだと、夜中な病院連れて行くのに起こされるから絶対ダメだと熱弁された記憶が思い出された。
『店によります。8割くらいダメだけど、食べられる店もあるよ』
それ、大丈夫じゃない。
もうこれ、食材を買って料理しないとダメなのではないだろうか。
普通に食べて体調を崩さない食材はどれ。虫のいる野菜や寄生虫のいる肉は調理できません。
『それなら、芋。芋なら大丈夫よ』
というか、芋しかないな。その返事は。
『えーと、その。……ダンジョンへ行きましょう! この町の近くに食材や食品をドロップするダンジョンがあります』
とりあえずおすすめの芋を買い、食べられる屋台て串焼きを買う事にした。その場合で立って食べて、串は木の筒に返却する。
パサパサしたうっすら塩焼き肉だったが、今朝の食事が貧しすぎたので、悪くはなかった。
食べ終わったらダンジョンへ向かう。
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