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「あんた、異世界人か?」
背後から声をかけられたが、スルー。
知らない声だし、たぶん男。人混みの中で異世界人とか呼ばれたくもない。
早足でスタスタ歩いて行く。ちょっと、筋肉痛が辛いが、そのまま関所から外へ出た。
「おい、ちょっと待て」
なかなかしつこい人の様で、仕方なく振り向く。鍛えられた身体をしたオレンジの髪の青年で、腰に剣がぶら下げられている。
「どちら様?」
「Aランク冒険者のフライトだ」
たぶん、冒険者として優秀な人なのだろう。
『Aランクなんて、田舎町にはそうそういないよ。彼もこの町を拠点にはしてないはずです』
「ご用件はなんでしょうか?」
「あんたはなんで1人で行動している?」
「一緒に行動する相手がいないからです。ところで、なぜわたしが異世界人だとわかったのですか?」
「歩き方とアイテムボックスの使い方だ」
自分でアイテムボックスのスキルを持っている人は、何もないところに手を突っ込んで突然物が出てきたように見える。しかし、異世界人はナビゲーターがアイテムボックスを持っているので、手の上や側に突然物が出てくるそうだ。
歩き方の方は、珠莉とさしては最大限警戒していたが、買い物中の主婦に連れられた子どもよりカモに見えたらしい。
この世界で自衛するのは難しそうだ。
「冒険者ギルドで働くのを希望した3人とは元の世界で同じ職場だったんだろ?」
冷ややかに微笑み解答を拒絶する。
黙った男を置いて歩き始めると、再び追いかけてきた。
「どちらまで行かれるのでしょうか?」
なんか、口調が気持ち悪くなってる。珠莉は足を止める事なく歩みつづけた。
「目的を教えてくだされば、役に立ちますよ。これでも冒険者としては優秀です」
しゃべり方がなんかぞわぞわするが、経験者の言葉は価値がある。
「ダンジョンへ行くのよ。冒険者といえばダンジョンでしょ」
普通の魔物は遺体を持ち帰るか解体して、売れる部位を持ち帰らなくてはならい。しかし、ダンジョンはモンスターを倒せばアイテムをドロップする。
その辺で採取できる薬草では、最低ランクの食事しか得られないが、討伐は採取より報酬がいい。今は討伐の報酬より、不安なく食べられる食事の方が重要だ。
「初めての方が訪れるとなると、踊る野菜ダンジョンですね。歩くと距離があります」
そうしてフライトは片手で握られるくらいのカプセルを取り出した。カプセルが光ると馬ぽいモノが出てきた。
『ダンジョン産のゴーレム騎獣、馬タイプです』
入手するには高難度のダンジョンを探索する腕とアイテムを入手する運が必要になる。
「どうぞ、お乗り下さい」
あれで練習するれば乗馬スキルは手に入るだろうか。ちらっと疑問に思えば、入手可能だとナビゲーターは答えてくれた。
「乗り方、教えてもらえますか?」
「喜んで」
しかし、この人、急に態度変わったけど、何があったのだろう。
よくわからないが、利用できるところは利用させてもらうことにした。
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