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 おっかなびっくりあぶみに足をかけて騎乗する。手綱を引いてもらい、ゆっくりと進む。  思ったよりも視界が高くて、遠くまで見渡せた。  歩かせるのに慣れたころ、走らせてみようと2人乗りする。背後から手綱を取られ、駆けた。  原付バイクくらいの速度は余裕で出ているようで、感じる風が冷たい。  目的地にはすぐに着いて、草原の中に洞窟があった。背後が崖なんてこともなく、見た目が岩の門のような物があって、洞窟の入り口部分だけがある。それがダンジョンらしい。  ダンジョンの扉が閉まらないタイプは皆が同じフィールドにいることになるダンジョンで、モンスターもお宝も早い物勝ちになる。  そのため、早朝からダンジョンへ向かう冒険者は多かった。 『夜はモンスターの種類も変わるよ。だいたい昼より強くなります。昼と同じモンスターでも凶暴化するよ』  そのあたりが、ダンジョンで夜を明かさない理由になっている。 「このダンジョンは10層までありまして、3層あたりまでは小遣い稼ぎに来ている子ども多く、混み合っています」 「そう。なら4層へ行ってみようかしら」  相手が子どもでも、争奪戦には負けそうな気がする。順路を矢印で示した看板があるので、それに従い層を超えるための階段を下って行く。 『看板のあるダンジョンはほとんどありません。このダンジョンを標準だとは思わないで下さい』  普通は冒険者ギルドで売っている地図を購入するか、マッピングしながら潜るものらしい。  通ったところはメモしなくてもだいたい覚えてるのたが、描かないとダメなのだろうか。 『マッピングスキルがあるの描かなくても大丈夫ですが、描くとスキルレベルの上がりがいいです。レベルが上がると精度がよくなるよ』  新発見のダンジョンだと地図も冒険者ギルドが買い取ってくれるそうだ。  時間がかかるだけで、ダンジョンに潜っていたらマッピングスキルは上がるらしいので、現状メモは無しで行くことにする。  順路通りに進み4層に入った。これまでのところモンスターとの戦闘はない。モンスターも取り合いだから、手なんて出させてもらえなかった。  3層までよりは冒険者が減ったが、少し歩けば冒険者に遭遇する。仕方ないのでさらに下へ向かった。 「次、6層です。よろしいのですか?」  チラリとナビゲーターを見る。 『職業スキルからすれば余裕だよ。人がいる方が巻き添えの心配があります』  ナビゲーターの言葉を疑っていては、この世界では生きていけない。珠莉は階段を降りていく。  6層に入り、やっと人がごちゃごちゃした感覚がなくなった。 『それが探知スキルです。人と違う感覚がモンスターや罠だよ。注意して』  正面から何かが向かってくる。この感覚がきっとモンスターと呼ばれるモノなのだろう。  
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