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「もー、どうすんのよ。平穏が欲しいなら初ダンジョン踏破なんてしないでよ!」
担当異世界人が眠りについたので、本日の業務が終了した神に使える者は叫んだ。天使型ナビゲーターのアバターを日々操作し、スキル〈ホーム〉の庭に植えたまま、まったく手入れしない賢者の代わりに庭の手入れをし、部屋の掃除もしている。
「雪原の女王ダンジョンなんてAランク上位かSランク用のダンジョンなのに、何やらかしてるのよ」
「ついにダンジョン踏破しちゃたか」
天使型ナビゲーターの担当者は3人いて、賢者寝ている間に情報のすり合わせをしていた。
「あー、パーティーメンバーも秘匿狙いか。ムリだろ? 黙っていた方がどんなすごいお宝かと、妄想たくましく狙われるぞ」
履歴を確認しながら、今後の対応を協議する。
「変装用アイテムってあったか?」
「あるけど、ダンジョン浅層品だからしょぼい。ないよりはマシだけど」
「どこか近くに変装用アイテムの出るダンジョンないか? 元奴隷くんも変装さしたら目立たなくなるだろうし」
近場のダンジョンを調べ協議を続けた。
「おい、あんまり南には行かせ過ぎるな。ヤベーダンジョンがある」
「あっ、アレね。絶対賢者さん嫌がるよ」
「異世界人だけじゃなく、地元民も嫌がっているからな」
女友達に旦那を取られた女が、旦那と女友達の担当者地区の境目に作った完全なる嫌がらせダンジョンだ。人間のとばっちりが酷いが、大災害を起こされるよりはきっとマシ。
「とりあえず、人里には行かさないで、食材集めに集中してもらうか」
「米に味噌に醤油。賢者さんの食いつきはいいしな」
「地味に豆と豆腐も好きだし、あとは乳製品と卵?」
「納豆どうする? ダンジョン担当者に要望出すか?」
「異世界人以外はまず最初の一口の難易度が高いだろ。たしか藁はドロップするとはずだから錬金術で作らせよう」
藁がレアドロップ品なので、賢者がダンジョンに入っている間、ドロップ率を上げてもらう必要はあるかもしれない。たが、賢者はなかなか引きがいいため、対処の必要なしでも手に入れそうではあった。
現地ではハズレ扱いだし、なるべくドロップ率はいじらないままいたい。
はぁー
誰もなく、大きなため息が出た。
「遺産相続争いに突入した賢者の後輩ちゃんと、どっちかマシなんだろう」
「スピード婚で後妻に入り、1週間で他界だっけ?」
「嘘偽りなく病死で、親族連中に殺人の疑いかけられているんだよな」
「まだ騒ぎになっていないし、賢者の方がマシだろ」
「そうだな。賢者の上司のユニークスキルより、畑の手入れや掃除の方が楽だもんな」
上司ユニークスキル〈ドール〉。見た目が元世界の娘の姿で、機能がメイドかオカンな世話焼きだ。
この男、女に靴下を履かせてもらうタイプで、ユニークスキルに靴下を履かせるという動作を教える事になった担当者は目が虚になっていた。
「お局さんは、冒険者ギルド職員だけでキープくんが8人。他業種の人も含めたら2桁突入だよ」
「後輩ちゃんが結婚してからいっきに増えたよね」
他の異世界人の話題を出して、賢者担当はまだいい方だと思い込むようにしていた。
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