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 季節が夏に変わる頃、長雨にあった。  東に進路をとり、転々とダンジョンを攻略していると、冒険者の中に獣人を見かけるようになった。獣人はさまざまな特徴の出方があり、種族も多数ある。  顔だけが獣な者、その逆に首から下が獣だったり、二足歩行する全身獣だったり、元の世界の萌キャラよのように耳と尻尾にだけ特徴が出ている者がいたりする。  両親が同じ兄弟でもね特徴の出方はさまざまで、どれがいいかは本人の趣向と地域文化によって異なっていた。  飼育しなくていい猫か犬を雇用するのは有りか無しかで、悩んでいたら、客が来る。雨除けに滞在中の宿は混み合い、どの部屋も相部屋でベッド分のスペースしかなかった。  今の時期はお金を出したからと個室にはしてもらえないらしく、宿泊料を払って部屋にやってきた相手から逃げる場はない。 「よう、フライト久しぶり」  気楽に声をかけてくるのはフライトと同じAランクの冒険者だ。冒険者ギルドからの依頼で、冒険者ギルドの職員を護衛して、やってきたらしい。  指名依頼された理由に、フライトの顔を知っているというのもあるそうだ。 「やっとお会いできました。ギルド職員のバムスと申します」  雪原の女王ダンジョンの情報を買取に追いかけて来たそうだ。ちょとした本くらいある紙の束をフライトがギルド職員に渡す。 「報酬も情報も独占するは取りすぎだからな。攻略が進んでいないというなら、どうぞ」  それ以上の話は機密性のない場で語るつもりはないと、フライトは断る。そこは護衛の冒険者もギルド職員も納得のいく理由だった。  では、冒険者ギルドに来てもらえばいいのたが、罪を犯したわけでもない冒険者に冒険者ギルドは出頭命令は出せない。 「フライトさん以外のパーティーメンバーの方はギルド登録の職業を変更される予定はありませんか? 変更された方がランクは上がりやすくなると思われます」  2人して首を横に振る。 「パーティーを組んだことでオレのお荷物扱いされたのが嫌だっただけで、どっちも平穏をお望みだ」  頭を下げて下げて冒険者ギルド職員は部屋を出て行く。 「フライト。東に移動したのは正解だ。しばらくはお仲間と一緒に西に戻ってくるなよ」  ひらりと片手を振ってAランク冒険者も部屋を後にした。  ナビゲーターもAランク冒険者の意見に賛成してくる。もともと、雨が上がったら移動だ。来た道を戻るつもりもない。  ここでコーヒーを飲むと、物珍しさに視線を集めるのが不満だった。  まったりと気楽に飲みたい。この辺りは香草茶が主流みたいで、コーヒーや紅茶は高級品扱いになっている。  長雨は嫌じゃないけれど、〈ホーム〉を使えない環境は苦痛だ。かなりスキル依存していたようで、人の気配が近くて眠りも浅い。  仕方ないから、夜中はベッドを覆うように結界を張っている。  どうにもここは、落ち着かなかった。
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