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 スキル依存に気づいたら、ナビゲーターに頼りすぎているのにも気づいた。だから、1つづつ出来ることを増やしていこう。  まず、アイテムバッグを持つようにした。ダンジョン深層で手に入れた物の1つで、ベルトで腰につけられるポーチで場所をとらない。ポーチの魔石に魔力登録をしておけば、登録した人しか使えないため、スリ対策にもなる。  ナビゲーターに依存してしまったのは、スリが存在するからだ。ダンジョンモンスターは殲滅できるのに、スリに対しては勝ち筋が見えない。 『そこは頼ってほしいです。そのためのナビゲーターだよ。無理しないでほしいです。不味い食事と劣悪な環境が続くと死にたくなるタイプなので、本当にやめてよ。いくらでもサポートするから』  思いのほかナビゲーターが必死だった。  ポーチからスられる事はないが、手に持っている間にスられる可能性残っている。海外旅行先でそんな被害も発生しており、ポーチの中にサイフは複数入っていた。  ほぼ銅貨しか入っていない。それ以上の買い物はナビゲーターに財布の中に直接補充してもらう。  高額な買い物ならおそらく財布を出すのは店内だ。露店で買い物するよりはいいはず。  交易都市として発展した町は、河川と水路が整備されており、河川敷きに露店が立ち並んでいた。  この町の商業ギルドに登録してきたネイトによると、広場に露店を出すより河川敷きの方が安いらしい。安いだけじゃなく、この町での商売実績がないと、河川敷きの露店しか許可されないとも言っていた。  ネイトが売っているのはクレープだ。この辺りに出ている、席を用意していない店にしては高めの値段設定になっているが、焼いている匂いにつられて買っていく人が多いらしい。  おかず系は焼きたのクレープで具を巻いてから、レタスみたいな葉野菜に包んで渡しおり、お菓子系は冷ましたクレープで巻いてそのまま渡しているそうだ。  器を持っている人には香草茶も販売している。温冷どちらも売っているが、日差しが強くてなってきたので冷たい方が人気らしい。  製氷機作ってあげた方がいいのだろうか。お店については、ネイトが自分でやっていることなので口出していないが、魔道具類は援助している。  ちょいちょい絡まれたり男女問わず口説かれたりしているが、ネイトは楽しそうだ。  フライトは不動産屋で物件巡りをしている。この辺りはダンジョンも多いし、何も問題が起きないなら、長期滞在してもいい。  そうすると賃貸より好きに改造できる方が良かった。更地もありだが、揉めていない土地がいいので冒険者ギルドは頼っていない。  条件はフライトに伝えてあるし、資材にしろお金にしろ必要になればダンジョンに行けばどうにかなる。ネイトの露店設営に立ち会ったあと、時間ある珠莉は露店を見てまわっていた。  欲しいものは特にない。食べ物は衛生的に安全なら食べてはみる。 「えっ」 「あっ」  うっかり声がでたら、向こうにも気づかれてしまった。 『21年前にこられた方です。同郷だよ』 『そっちはまだ1年も経っていないな』  同年代より下に見える男は羽のある蛇みたいやナビゲーターを連れたいた。 「今はユートと名乗っています。これでも40はすぎてますよ。こっちに来たのは大学生のときだったので」 「シュリです。ミレニアムの頃?」 「懐かしいな。世紀末で騒いで、結局何にもなく21世紀になった頃だ」  この感じだと9.11の前にこっちの世界に来ていそうだ。  お互い時間もあるからと、喫茶店に入る。 『そろそろ老後を考える前に、ここ異世界なんです。魔力を持った事で寿命が変わった事を理解してほしいよ。目の前の人、まさに実例です!』  注文が終わったあと、ナビゲーターが熱弁した。 「まあ1年くらいじゃ実感はしないよ」 『若返っているのに、ダンジョン潜って運動しているからだって、頑なに認めてくれないんです!』 『なんかこだわりでもあるんじゃないか? 頑なになる理由があるだろ』 『婚期?』  ピンポイントで痛いところに来た。 「寿命が伸びた分、婚期も長いですよ。歳の差婚もよくあることです」 「ユートさん、結婚しています?」 「あー、ハーレム作って、末の子供が成人したので、全てを置いて逃げ出してきました」 『ハニートラップに引っかかってよ。やっと利用されているのに気づいて避妊を意識したんだが、女と子どもに泣かれると演技だとわかっていてもなかなか離れられなくてな』 「成人したならもういいかと、ここ数年はふらふらしてます」 『国の紐付きには気をつけろ。1度引っかかるとなげーし、次から次に用意されるぞ』 『拗らせてる人になんて話するです。もっとこう、夢のある恋愛の話にしてよ』 「騙されている間は幸せだった。女たちが争う事もなかっし」 『引き継いだスキルによって女も子ども国からの待遇が露骨に違ってからは、な』 「でも、同時にこっちの世界に来た、夫6人持った女の子よりはいいはす。確かあの子、制服だだたし、高校生だったよな」 『高校生だ。お人好し過ぎて、家督が継げなくて行くところがないと嘆いた男を6人も面倒みるはめになっている』 「一般庶民ならまだよかったんだが坊っちゃんだから金はかかるし、それぞれと子ども作ったのに、稼げる男はいないし、男の実家は援助するどころがたかりにきているからな」 『異世界の婚姻失敗を語らないで。成功した人もいたはずです』 「元可憐な美少女複数が鬼女クラスチェンジして、強制家族ごっこ強いられたのを、やっと終わらせてきた男に、酷なことを言わないでもらえないか」 『一夫一妻文化に育った人は一夫一妻がいいくらいしか言えねぇ』  常に微笑みを浮かべている男が、哀愁を漂わせる。なかなか闇が深そうだ。
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