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 元の世界では、上司と部下という関係だった。この場にはいない女性も部下で、仕事をしていたはずなのに、気づいたらこの世界にいたらしい。  残してきた妻子が心配だと吐露する男。子どもはまだ幼いのと涙ぐむ女。何もわからない異世界で、不安定たまらないとしなだれかかってくる女。  とりあえずスキルを駆使して暴れそうな人たちではない。魅了のスキル持ちもいないようで、異世界人が持つというユニークスキルが安全で有れば害はなさそうだ。  魔物と戦えるとは思えないと3人ともがそれぞれの言葉で告げてくるので、冒険者ギルドに内勤の仕事はないか相談しておく。  翌日の朝、彼らが冒険者ギルドを訪ねた時に冒険者ギルド内での仕事を紹介したそうだ。ギルド内部で使うなら経過観察も楽だろう。  フライトは会えなかった最後の1人を探しに行く。  早朝から開いていた食堂でメシを食っていたら、冒険者ギルドの職員が呼びにきた。冒険者ギルドに現れたらしい。  本人にバレないよう鑑定したところ、職業が賢者なのはわかったが、それ以上はバレそうで見えなかったそうだ。  聖女に勇者に賢者。今回の異世界人はなかなか強力な職業についている。 「今、出てきている女です」  冒険者ギルドにフライトがたどりたく前に出てこられ、1人で後をつけることにした。  すでにこのこちらの町に合わせた服を着ているが、どうにも町の住人の中に溶け込めていなくて目立つ。  市場を見ものして芋を買い、屋台で串焼きを買って食べる。そのどれもが幼子のように楽しんでいるように見えて目が離せない。  そこで声をかけたが完全な無視をされ、町の外まで追いかけていくハメになる。やっとこちらを向いてくれたが、なかなか警戒心が高そうだ。 「冒険者ギルドで働くのを希望した3人とは元の世界で同じ職場だったんだろ?」  この問いの何がダメだったのかはわからない。女は冷たく冷ややかな眼差しと笑みをよこした。  ゾクリとして、美しい。心臓が鼓動を早め、隷属したい欲望に襲われる。  賢者に魅了のスキルはないはずだが、支配なら持っているだろうか。そんな事を考えていると置き去りにされそうになり、慌てて追いかけた。  どうにか役立つ点を披露できたようで、同行を認めてもらう。  何事もなく、ダンジョン6層に到着し、賢者の魔法を見た。  冒険者ギルドに早くランクを上げるように進言しよう。パーティーごとに隔離さらるダンジョンを利用させないと危険だ。  この魔力量では冒険者ギルドの訓練所も破壊しかねない。隔離してダンジョンで魔法の練習をしてもらわないと、暴漢に襲われて撃退するのに町を灰塵にされそうだ。  モンスターハウスでモンスターと一緒に火だるまにされそうになり、その思いはより一層強くなる。  ダンジョンボスも簡単に倒してしまった女だ。ランクを上げても問題はない。必要なら、推薦状も書く。  彼女は危険な女だ。けれど、宝箱を楽しそうに開ける姿は無邪気で、身惚れてしまった。
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