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1章
ここでの一日は、陽が高く昇りきった頃から始まる。
本番のとなる夜に向けて、従業員たちが慌ただしく歩く音が聞こえてくる。
ここはかつて”江戸”と呼ばれた場所、東京。
倒幕の動きが加速し、ついに長年続いていた統治体制が崩れた。
しかし、すぐに世の中が平和になるわけもなく、その後も日本中が混乱と疲労感に包まれていた。
多くの犠牲や我慢の果てに、漸く内戦が漸く終結し、日本に平穏が訪れたと思った矢先。
日本中に原因不明の疫病が蔓延した。
それもこの病は成人男子(13歳以上)が罹患するもので、致死率、感染率共にこれまでの病とは比べられない程だった。
日本における成人男性の割合は低下の一途を辿り、一時は女性の人口に対して男性は三分の一まで減ったらしい。
それにより、働き手の一切を女性が担う時代が到来した。
政治家も、大工も、漁師も、医者も。
ほとんどの社会生活を女性が動かしていた。
その病は十年以上の歳月の間で猛威を振るったが、突如として急速にその罹患者数を減らし続け、今では年間での罹患者数の報告もほとんど聞かれない。
だが、いくら病がなくなったといってもすぐに男性の割合が増えるわけもなく、そこからさらに年月が経った今でも女性が生活を支え、男性は保護されるべき存在とされている。
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