1章

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このような時代背景を辿ってきていても、人間の根本にある欲求は変わることなく受け継がれるもので。 そうして激動の時代を経ても残り続けているのが、多くの人間が快楽を求めて集まる、ここ”遊郭”である。 特にこの場所は東京の中でも一つの街を築くほどの規模であり、多くの男女が訪れるこの場所は常に賑わいをみせ、どこか浮ついているような雰囲気だ。 だが、ひと昔前とは全く異なっている点が一つ。 それは、男性が色を売っている。 客は規則に則り、金さえ払えば男も女も遊ぶことができるのだ。 その中でもここ『泡沫楼』は、東京一の大店である男娼遊郭だ。 多くの男遊が所属し、見目麗しい男子が多いことの他、最も人気のある男遊からお披露目したばかりの者まで、作法の美しさや芸事の多様性が受けていた。 ここでは楼主の意向で、お披露目するまでの期間は比較的長く設けられ、最低限以上の所作を教えられる。 それが他の店との差別化され、ここまでの大店になったのだ。
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