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恐る恐る目を開くと、ちょうど反対側のホームから電車が走り去った後だった。
……まさか。
電車から降り帰路を急ぐ人達の群れに紛れて、ただ一人ホームで立ち尽くしている星くんの姿があった。
どういうこと!?
いや、それを願ったのは私だけど!
なんか変な呪いをかけちゃったとか!?
それとも星くん、具合が悪くなった!?
あたふたする私に向かって、星くんは極めて冷静に合図をした。
右手を上げて階段の方を指さす。
私はこくりと頷くと、はやる気持ちを抑えながら階段を駆け下りた。
「……星くん!」
さっき別れたばかりの階段下で落ち合う。
星くんは少し顔を赤らめながら苦笑した。
「星くん、何で乗らなかったの?」
自分のことを棚に上げてしまう私に、星くんは言った。
とても誠実な声だった。
「なんでって聞かれても、正直うまく答えられないけど……。帰りたくなくなったから」
帰りたくなくなった?
それって……
「町田さん。……もしよかったら、また二人で朝まで過ごさない?」
星くんの猛烈に男らしい、率直な、それでいてロマンチックな匂いも含む言葉に、私は何度も頷いた。
「じゃ、じゃあ、またファミレス行こうか」
震える声を振り絞る。
信じられない。
また星くんと朝までファミレスでポテトやパフェをゆっくり食べながら、他愛もない話をできるなんて。
「……いや、あのさ」
急に神妙な顔になる星くん。
「星くん?」
星くんは真っ赤になりながら、言い辛そうに躊躇しながら言った。
「……今日は、別のところに行かない?」
「別のところって……」
まさか、それって……。
……ついにワンナイトラブの誘い?
気が動転して固まる私に、はにかんで笑う星くん。
「……今日は、ネットカフェに行かない?」
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