第二夜

4/7
前へ
/34ページ
次へ
 ホームで電車を待っている時、ふと目に入ってしまった星くんの姿。  姿勢がよく、すらっとしているから、遠くからでもすぐに彼だということがわかる。 「あ……」  二人組の女性から声をかけられているところが見えて、思わず間抜けな声が出てしまった。  もしかしてナンパだろうか。  気になって仕方がないけど、今あっちのホームに行くわけにもいかないし。  何より、もうすぐ電車が到着する頃だ。  焦る気持ちが身体に出てしまい、うろうろと行ったり来たりしているうちに、星くんは頭を下げ、彼女達が去っていくところが見えた。  ホッと胸を撫で下ろす。  あまりにも気になっていたから、自分が星くんをガン見していることにも気づかなかった。  私の気味の悪い熱視線が伝わったのか、彼もこちらを見ている。  ギクリとしながらも、私に気づいて小さく手を振ってくれるのが嬉しかった。  手を振り返したのと同時にやって来た電車。  どうしよう。名残惜しい。  猛烈な寂しさを感じて、身体が固まっているうちに、反対のホームにも電車が到着していた。  これを逃したら、乗り換えの最終電車に間に合わない。  頭ではわかっているのに、何故だか足が動かなかった。  発車のメロディを聞きながら、大きく深呼吸をする。  …………賭けに出よう。  99.9%望みの薄い賭けだけど。  残りの0.1%に願をかけながら、ドアが閉まり発車する電車を見送った。  ギュッと目を瞑る。  …………どうかそこに、彼が居ますように。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加