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ホームで電車を待っている時、ふと目に入ってしまった星くんの姿。
姿勢がよく、すらっとしているから、遠くからでもすぐに彼だということがわかる。
「あ……」
二人組の女性から声をかけられているところが見えて、思わず間抜けな声が出てしまった。
もしかしてナンパだろうか。
気になって仕方がないけど、今あっちのホームに行くわけにもいかないし。
何より、もうすぐ電車が到着する頃だ。
焦る気持ちが身体に出てしまい、うろうろと行ったり来たりしているうちに、星くんは頭を下げ、彼女達が去っていくところが見えた。
ホッと胸を撫で下ろす。
あまりにも気になっていたから、自分が星くんをガン見していることにも気づかなかった。
私の気味の悪い熱視線が伝わったのか、彼もこちらを見ている。
ギクリとしながらも、私に気づいて小さく手を振ってくれるのが嬉しかった。
手を振り返したのと同時にやって来た電車。
どうしよう。名残惜しい。
猛烈な寂しさを感じて、身体が固まっているうちに、反対のホームにも電車が到着していた。
これを逃したら、乗り換えの最終電車に間に合わない。
頭ではわかっているのに、何故だか足が動かなかった。
発車のメロディを聞きながら、大きく深呼吸をする。
…………賭けに出よう。
99.9%望みの薄い賭けだけど。
残りの0.1%に願をかけながら、ドアが閉まり発車する電車を見送った。
ギュッと目を瞑る。
…………どうかそこに、彼が居ますように。
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