173人が本棚に入れています
本棚に追加
結局電車には乗らずに、改札を通りいつもの繁華街に戻ってきた私達。
バイト先のコンビニも、この前行ったファミレスも通りすぎて、3階建ての結構大きなネットカフェに入った。
初めて来たそのお店は、内装はおしゃれだし、清潔感もあって心地よさそうな空間だ。
女性客も多いし、なるほど、夜を明かすには良い場所かもしれない。
「座席はどうしましょうか?」
カウンターの店員さんの問いかけに、私達は一瞬お互いを見合わせた。
「カップルシート、一席だけ残ってますが」
店員さんが見せてくれる写真によると、かなり狭い一室に二人がけのシートがあるだけだ。
「いやややややや!」
「だだだだだ大丈夫です!」
二人してあたふたしていると、店員さんは笑いを堪えているようだった。
そのまま一席ずつ別々の座席を用意してもらうことに。
……当たり前の結果だけど、内心これで星くんと別行動になるのは寂しかった。
「すごい品揃えだね」
「なー。あ、ハーブティーとかあるよ」
二人であれやこれや言いながらドリンクバーを吟味して、いざ別々の室内へと。
「……………………」
「……………………」
再び顔を見合わせて、しばし固まった。
……やっぱり名残惜しい。
せっかく朝まで一緒にいられるのに、おしゃべりすらできないなんて。
「…………あの」
「…………あの」
言葉が重なって、みるみるうちに体温が上昇していく。
何故なら彼も、真っ赤になってこちらを見ているから。
「……もし疲れてなかったら、あそこでちょっと話さない?」
星くんが指したフリースペース。
「……是非!」
分かりやすく顔を緩ませながら激しく賛同すると、星くんは柔らかく微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!