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「そりゃもちろんラブホでしょ!」
カナちゃんの言葉に勢いよくビールを噴き出した。
ついにビールだ。
しかしやはりハードルが高かった。
苦い。とにかく苦い。
息を止めて飲めば喉越しの良さがわかるけど、舌に残る苦みにどうしても慣れない。
それはそうとして。
「聞こえるってカナちゃん!」
今日も今日とて、飲み会では席が離れている星くん。
ちらりと彼を確認すると、なんと星くんはこちらを見ていた。
それも顔を赤らめて。
「カナちゃん!!」
今度こそ聞こえちゃったじゃないか!
まずい、まずいぞ。
……これから約束してるのに。
スマートフォンの画面にメッセージマークが浮かんで、跳びはねそうになる気持ちを抑えた。
『そろそろ行こうか』
星くんからのメッセージだ。
先月のネットカフェの夜、ついに連絡先を交換した私達。
速まる鼓動を落ち着かせながら再び星くんを見つめると、彼は少し口角を上げて頷いた。
落ち着くどころか、どんどん心音は激しくなる一方。
なんだか密会みたいで舞い上がってしまう。
「じゃ、じゃあ。そろそろ帰るね」
私達はほぼ同時にお座敷の席から立ち上がり、それぞれ会釈した。
「頑張れよー!」
「楽しんでねー!」
あれ、密会のはずなのに、いろいろとバレてしまっているみたいだ。
ニヤニヤしながらジョッキやグラスを上げている皆に見送られ、私達は居酒屋を後にした。
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