第三夜

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 コーヒーを飲みながら、物語の動向を固唾を飲んで見守った。  謎が謎を呼び、誰が犯人なのか全くわからない。  次々起こる殺人事件。  だけど固唾を飲んでいる理由は、それだけではなかった。 「……っ」 「……っ」  コーヒーをとろうとして、星くんの手に私の手が当たる。  慌てて腕を引っ込め、お互い黙って会釈した。  ……近い。近すぎる。  小さな映画館だから、座席の間隔が狭いんだ。  少しでも動くものなら星くんのどこかしらに触れてしまいそうで、もう平常心ではいられなかった。  だけどしばらくして、私はまた別の理由で何度も冷や汗をかき、固唾を飲むことになる。  ……気持ち悪い。  映画の中盤で、猛烈な吐き気を催した。  きっと慣れないビールを飲んだせいだ。  四時間前の、調子に乗っていた自分を恨む。  吐き気を煽るようにして行われる巨大スクリーン内の惨劇に、思わず口元に手を当てた。  ダメだ。……もう、限界。 「……町田さん」  小さな囁き声が聞こえたと同時に、星くんが立ち上がる。  驚いて見上げる私に屈んで近づき、そのまま私の身体を抱えあげた。 「え!?」  咄嗟に出てしまった叫びを、慌てて引っ込めた。  驚くほど軽々しく宙に浮いた身体に、頭が追いつかない。  
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