第三夜

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「ちょ、ちょっと星くん!?……うっぷ」  フロアに出るやいなや大声を出した拍子に、再び吐き気が襲った。  まずい。いよいよまずい。  このままでは、星くんの前で失態を……。 「大丈夫!?」  星くんは私を担いだまま、猛スピードでトイレまで走ってくれて、なんとか粗相をせずに済んだ。  だけどトイレから出た私は、絶望と不甲斐なさで、星くんの顔を見ることすら辛かった。  なんてことをしてしまったんだろう。  今日は星くんと一緒に夜を明かす大事な日だったのに、調子に乗ってビールなんて飲むから。  映画も途中になってしまったし、トイレでリバースした奴となんてこれ以上一緒にいたくないと思う。 「大丈夫?町田さん」  トイレの近くのベンチで待っていてくれた星くん。  彼はすぐに私を座らせると、ペットボトルのお水を差し出してくれた。 「ありがとう。……ホントにごめんね」 「全然。それより具合、大丈夫?」  心底心配そうな顔をしてくれる星くんに、余計胸が痛くなる。 「ごめんね。映画の途中だったのに。もう一度戻ろうか」  星くんは首を振る。 「無理すんなよ。少し休まないと」 「じゃ、じゃあ、星くんだけでも観てきて」 「大丈夫。それより、ちゃんと横になった方がいいんじゃない?どっか泊まろうか」 「泊まっ!?」  私の大声に、星くんは固まった。 「い、いや!違う!別々!別々だから!」 「う、うん!わかってます!」  こんな時に何を考えてるんだ。  相当迷惑かけてるのに。 「もし抵抗があるなら、タクシーで送るよ」 「え……」  そんな。  せっかく星くんと、憧れだった映画デート(と今だけは言いたい)だったのに。  どこかに泊まったとしても、タクシーで帰ったとしても、どちらを選択しても朝まで一緒には過ごせない。  もしかしたら、この一件で星くんも面倒臭くなり、もう二度と付き合ってくれないかも。 「う……」  いろんな考えが頭を過っているうちに、気づいたら涙が溢れおちていた。 「町田さん!?大丈夫!?具合悪いの!?」  タオルで顔を覆いながら、ぶんぶんと頭を横に振った。 「違うの。……そうじゃなくて……一緒に居たい」 「町田さん?」  どうかしている。  こんな、子供みたいに泣いて我が儘言うなんて。 「星くんと……一緒に居たいの」  もうこれで、ワンナイトもおしまいだ。
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