174人が本棚に入れています
本棚に追加
「星くん、眠くない?……私のせいでごめんね」
しばらくして少し落ち着いてくると、改めてこの状況に申し訳なさが込み上げる。
「明日大学?身体大丈夫?」
星くんは真夜中なのに軽快な動きでピザを取って、小皿に運びながら言った。
「大丈夫。夜型人間だから」
頼もしく笑う星くんが眩しくて、気休めにメロンソーダを飲み干す。
「それに、ずっとお礼言いたかったから」
「……お礼?」
「この間、熱出て欠勤しちゃった時、シフト代わってくれたの町田さんでしょ?あとから知って。町田さんも連勤だったのに、無理させちゃって悪い。……ありがとう」
「そんな、全然」
律儀に恩を感じてくれるのは星くんらしくて微笑ましいけれど、少しだけ胸がチクリと痛かった。
誘ってくれたのは、そういう負い目があってほっとけなかっただけなんだ。
特別、私と一緒にいるのがどうこうというわけではなくて。
「……金欠だったから逆に助かった」
気に病ませないように考えて出た言葉だったけど、今のはちょっと感じ悪かったかな。
人の心配より、自分の収入のことかよって。
がめつい子だと思われたかも。
自己嫌悪に陥り、恐る恐る星くんの顔を一瞥すると、彼はまだ優しい笑みを浮かべていた。
「ありがとう」
ダメだ。今日の星くんの笑顔は威力が凄すぎる。
今すぐに床にのたうちまわって、悶絶したいほどに。
「こ、こちらこそ。あ、風邪治って良かったね。だけどまた寝不足で、体調壊したりしないかな?ごめんね、」
「すっげー楽しい」
「え?」
星くんはコーヒーを飲みながら、少しだけ頬を赤らめ、上目遣いで私を見た。
「町田さんとこうしてるの、すげー楽しい」
あああああああ。
もう倒れそう。
膝の上で拳をぎゅっと握って、震える足を落ち着かせる。
速まる心拍数がばれないように、鼻でゆっくり呼吸して。
「わ、私も。……楽しい」
言った!
偉い!言った自分!
「あのさ、……町田さんって……」
どこか神妙な顔つきで、顔を赤らめながら言いづらそうに言葉を探している様子の星くん。
期待しない方が無理。
これから何かが始まるような、そんな夜だって夢見てしまう。
「な、何……?」
「町田さんって……」
もうその真っ直ぐな目を見ていられなくて、ぎゅっと目を瞑った。
「……ぶよぷよとテリトス、どっち派?」
思ってもみなかった質問に、再び目を見開いて答えた。
「…………どっちかっていうと、テリトス」
「マジで。俺も。なんか四角くてスッキリするよな」
「うん…………」
そのまま朝までパズルゲーム談義は続いた。
最初のコメントを投稿しよう!