第一夜

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「星くん、眠くない?……私のせいでごめんね」  しばらくして少し落ち着いてくると、改めてこの状況に申し訳なさが込み上げる。 「明日大学?身体大丈夫?」  星くんは真夜中なのに軽快な動きでピザを取って、小皿に運びながら言った。 「大丈夫。夜型人間だから」  頼もしく笑う星くんが眩しくて、気休めにメロンソーダを飲み干す。 「それに、ずっとお礼言いたかったから」 「……お礼?」 「この間、熱出て欠勤しちゃった時、シフト代わってくれたの町田さんでしょ?あとから知って。町田さんも連勤だったのに、無理させちゃって悪い。……ありがとう」 「そんな、全然」  律儀に恩を感じてくれるのは星くんらしくて微笑ましいけれど、少しだけ胸がチクリと痛かった。  誘ってくれたのは、そういう負い目があってほっとけなかっただけなんだ。  特別、私と一緒にいるのがどうこうというわけではなくて。 「……金欠だったから逆に助かった」  気に病ませないように考えて出た言葉だったけど、今のはちょっと感じ悪かったかな。  人の心配より、自分の収入のことかよって。  がめつい子だと思われたかも。  自己嫌悪に陥り、恐る恐る星くんの顔を一瞥すると、彼はまだ優しい笑みを浮かべていた。 「ありがとう」  ダメだ。今日の星くんの笑顔は威力が凄すぎる。  今すぐに床にのたうちまわって、悶絶したいほどに。 「こ、こちらこそ。あ、風邪治って良かったね。だけどまた寝不足で、体調壊したりしないかな?ごめんね、」 「すっげー楽しい」 「え?」  星くんはコーヒーを飲みながら、少しだけ頬を赤らめ、上目遣いで私を見た。 「町田さんとこうしてるの、すげー楽しい」  あああああああ。  もう倒れそう。  膝の上で拳をぎゅっと握って、震える足を落ち着かせる。  速まる心拍数がばれないように、鼻でゆっくり呼吸して。 「わ、私も。……楽しい」   言った!  偉い!言った自分! 「あのさ、……町田さんって……」  どこか神妙な顔つきで、顔を赤らめながら言いづらそうに言葉を探している様子の星くん。  期待しない方が無理。  これから何かが始まるような、そんな夜だって夢見てしまう。 「な、何……?」 「町田さんって……」  もうその真っ直ぐな目を見ていられなくて、ぎゅっと目を瞑った。 「……ぶよぷよとテリトス、どっち派?」  思ってもみなかった質問に、再び目を見開いて答えた。 「…………どっちかっていうと、テリトス」 「マジで。俺も。なんか四角くてスッキリするよな」 「うん…………」  そのまま朝までパズルゲーム談義は続いた。
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