おめで糖

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「これは本来、他人に贈る『祝い』にみせかけた『呪い』のキャンディでね。 これを贈られた相手の『祝い』を『呪い』に変えるアイテムだったのですよ。 これを一つ食べると、その人の『祝い』が一つなくなるのです。 おめでとうと祝いの言葉を口にしながら、人は誰でも他人の成功を呪うものです。 他人を蹴落としてでも自分だけは這い上がろうとするものなのです。 人の不幸は密の味、なのですから。 でもあなたは人を呪ったりしなかった。 ただ真面目に仕事を頑張って来た。 間違ってはいないが、人間として正しくもないのですよ。 本当にその気になれば昇進や結婚や、ほかにもたくさんの『おめでとう』があったのです。 それをあなたは諦めてしまった。 あなたは、あなたの人生に起きるはずだった『おめでとう』を全部自分で食べてしまったのです。 人を呪う事なく、自分を呪っていましたね。 もう良い事なんてないんじゃないかと。 結果、あなたの人生の『おめでとう』は売り切れた。生産中止ですな」 「……お前は何者だ、悪魔か死神か? だったら俺を今すぐ殺してくれ!」 「言ったでしょう? もうあなたの人生から『おめでとう』は売り切れた。 人生最後の祝福である死を、あなたは今食べてしまった。 このまま何も無い人生を永遠に生きるだけです」 それだけ言って男の姿は舌の上のキャンディの様に、そっと消えて行った。            《NEVEREND》
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