おめで糖

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『贈り物に最適!』と書かれたポップを見て、思わずフンと鼻で笑う。 まあこの時期だ。就職おめでとう、合格おめでとうのついでにあげるジョークグッズだな。商品名がベタなオヤジギャグなのもありがち。 でも、こんなの渡して適当にすませようってのも何か嫌だな。 しかし、特売品かと思ったらキャンディにしては高い。これは一応祝いの品として良い材料でも使っているのかもしれない。 実は俺は数年前に禁煙して以来、かわりに飴が止められなくなっている。 試しに買ってみようか。 「ありがとうございました」 メーカー直売なのか知らないが、そこを担当していた陰気そうな店員に金を支払い、俺は人にプレゼントするために作られたであろうキャンディを家に帰って一人、自分で食べた。 ……ほう!こりゃ旨いキャンディだ。 ただ甘いだけの物が多いんだが、これは立派なキャンディと呼べるキャンディだ。舌の上でとろける上質な甘さ。 なるほどおめでとうの言葉に添えても恥ずかしくないなと思いつつ、恥ずかしながらペロリと全部舐めてしまった。 袋の中にたっぷり詰め込んであったんだが。 これはお買い得と次の日また同じスーパーに行ってみたが、残念ながらもう無かった。 昨日の陰気そうな店員もいない様だ。 姉妹品で『ありが糖』とかあっても良さそうなのに。
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