おめで糖

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二月だから当たり前だが今日も寒いなあ。 仕事帰り、駅に向かう途中の自動販売機でホットの缶コーヒーを買う。今日も一日お疲れさま、俺。 ガシャン、と出て来た缶の熱さのありがたさ。しみじみと暖かい。 凍える両手で包んでゆっくりと飲みながら、ふと街を眺めれば誰もが意気揚々と歩いている様に見えた。 セーラー服と学生服のカップル。 スーツ姿の誇らしげな新入社員らしき男性。 就職おめでとう、合格おめでとうのシーズンがやって来る。 世の中には祝いの言葉を口にしながら、上手く行ってる奴を呪ってる奴も多いんだろうな。 でも俺は人を妬んだり、自分がなくした若さを呪ったりはしたくない。いいなあ若者はと素直に祝ってあげたいよ。 よく言われるが『祝』と『呪』。 似たような字だがえらい違いだ。 あー、そうだ今日は四十の誕生日だった。 この歳になったらもうめでたくもないが。 まだまだ若いと思うのは、この年代を経験し終えた人だけさ。 貧乏暇なし、仕事に追われる毎日。 職場は仕事の上だけの人間関係。 父も母も早くに亡くして、親戚とも疎遠。 結婚する予定も去年、消えてしまった。 出世の欲もなく、日々何とか生きている。 もうこれから先、俺にいいことなんてあるのだろうか。 このコーヒーみたいにもう全部飲み干してしまったんじゃないか。 いやいや、真面目に仕事をして、生きてるだけでも幸せなもんさ。 さあちょっと買い物して帰ろうとスーパーに寄ると、特売コーナーに山積みされた商品が目に入った。 カラフルなキャンディがたっぷり詰められた、いかにもって感じの紅白の袋。 『おめで糖』?
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