4月23日

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4月23日

 事件が起きたのは大学までの道すがらのことだった。僕は柔道場で行われる朝練のために伊木荘の最寄りにあるおんぼろの個人経営のコンビニ「パパマート」で賞味期限が二日過ぎていた梅干しおにぎりをただ同然の値段で購入し、むしゃむしゃとかじりながら道場へ向かって歩いていた。パパマートは創立五十年を迎えた優所正しき商店で、おにぎり、菓子パン、アルコール、風邪薬に果てはコンドームまで売っている(この周辺でそんなものが必要なのは皇くらいか)大学内に隣接されたコンビニエンスストアに負けないくらいの品ぞろえがあったのだ。オーナーである鷺沼のおじちゃんはとてもいい方で御年七十歳を迎えているにも関わらず若者のようにはつらつに喋り、狭いお店の中を忙しくうろつく。伊木荘に住む僕たちはいつも元気をくれるそんな鷺沼のおじちゃんが大好きだった。しかしただ一つ欠点を上げるとするならばパパマートで賞味期限や消費期限が切れていない商品を探すことが難しかったことだ。一か月前に菱田が購入したコッペパンは平成元年の七月に賞味期限をきれた掘り出し物であった。パッケージを見る限り食べれない感じもしないでもないので、いざ封を開けてみるとなんとも言えない無臭さが一層怪しく、菱田にとっては魅力的に見えたようで、あいつは僕と皇の忠告を無視して一分もかからないうちに完食し、その一時間後、大学の医務室に担ぎ込まれた。胃の中のありとあらゆるものを全て出し切った後、「やっぱだめだったわ」と笑いながら午後の部活に参加し、伊木荘にパパマートで購入したジャムパンをかじりながら戻ってきた菱田のことを僕は忘れることはない。  
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