第八十四話 教導大隊vsスベリエ飛行艦隊(四)

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第八十四話 教導大隊vsスベリエ飛行艦隊(四)

 スベリエ飛行艦隊の旗艦ケブネカイセがブナレス郊外の平野に不時着すると、旗艦に乗っていたアルムフェルトや士官達、兵士達は、動けなくなった旗艦を捨てて艦外に脱出する。  艦外に出たアルムフェルトは、空を見上げて呟く。 「チッ。・・・迎えは、まだか」  スベリエ飛行艦隊の大型戦闘飛行船の一隻が、不時着したアルムフェルト達を収容するために高度を下げ始める。  アレク達が不時着した旗艦に向けて急降下していると、アレクが旗艦から脱出して集まるスベリエ軍の集団を見つける。  スベリエ軍の集団は、意匠を凝らした派手な鎧を着た遊び人風の男を士官達が囲むように集まり、その周辺には兵士達が集まっていた。  アレクが目に留めた遊び人風の男は、周囲の士官達にあれこれと偉そうに指図していた。 (あいつだ! スベリエ軍の指揮官!!)  次の瞬間、スベリエ飛行艦隊の大型戦闘飛行船の一隻が高度を下げてアレク達に迫ってくる。  アレクが指示を出す。 「ルイーゼ。セイレーン小隊に向けて手旗信号を頼む。『セイレーン小隊は高度を下げて来る敵飛行船を攻撃』!」 「了解!!」  ルイーゼの手旗信号を受けてセイレーン小隊の四機が高度を下げている大型戦闘飛行船を主砲で攻撃し、主砲弾八発のうち、二発が船舷に命中する。  被弾した大型戦闘飛行船は、再び高度を上げてセイレーン小隊に対空砲火を撃ち始める。  アレクとルイーゼは、不時着したスベリエ飛行艦隊の旗艦にほど近い平野に飛空艇を強行着陸させると、飛空艇から飛び降りる。  アレク達の飛空艇の近くにグリフォン小隊とフェンリル小隊も飛空艇を強行着陸させ、飛空艇から飛び降りる。  二つの小隊が着陸したのを見計らって、アレクはゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを抜くと、ルイーゼに声を掛ける。 「行くよ。ルイーゼ」  ルイーゼも手甲の鉤爪を前に倒して戦闘準備を整える。 「ええ」  アレクとルイーゼの二人は、スベリエ軍に突撃する。  スベリエ軍部隊を目掛けて突撃する二人を見たルドルフが叫ぶ。 「グリフォン小隊! 総員、中隊長に続け! 突撃!!」  ルドルフ達、グリフォン小隊がアレクとルイーゼの後に続いて突撃する。  スベリエ軍に向けて突撃し始めたアレク達やルドルフ達グリフォン小隊に、フレデリク達のフェンリル小隊も続く。    アレクとルイーゼは、スベリエ軍部隊の中に斬り込んでいく。 「ウォオオオオ!!」  アレクは、スベリエ軍の兵士に向けて、大上段に振り上げたゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを袈裟斬りに振り下ろす。  魔力を帯びたゾーリンゲン・ツヴァイハンダーは、容易く斬り付けた兵士の身体を一刀両断する。  アレクは、返す刀でもうもう一人のスベリエ軍兵士を斬り伏せ、進んで行く。  斬り込んで来たアレク達を見たスベリエ軍兵士が叫ぶ。 「て、帝国軍だ! 帝国軍の襲撃だぁ!!」  スベリエ軍の兵士達が一斉に二人に襲い掛かる。  アレクは、斬り付けてきた兵士の剣をゾーリンゲン・ツヴァイハンダーで受け流すと、斬り返しで兵士を斬り伏せていく。  血飛沫をあげながら次々とスベリエ軍兵士を斬り伏せ、突き進んでくるアレク達を見て、スベリエ軍兵士が狼狽え始める。 「強ェええ!」 「あいつ、帝国騎士(ライヒス・リッター)か!?」    アレク達の戦いぶりを見たアルムフェルトが指示を出す。 「長槍兵! 前へ! 敵を止めろ!!」  十人程のスベリエ軍の兵士が一列横隊に隊列を組んで長槍を並べ、アレク達の前に立ち塞がる。  隊列を組んで長槍を並べる長槍兵を見たアレクは、短く舌打ちする。 (チッ! 『槍衾(やりふすま)』!!)    アレクは、自分の身体の右側下方に剣先を下げてゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを低く構えると、長槍兵達を引き付けて長剣であるゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを一気に振り上げる。 「オォオオオ!!」  アレクは、雄叫びを上げながらゾーリンゲン・ツヴァイハンダーで長槍の穂先をまとめて斬り飛ばすと、長槍兵達の隊列に斬り込んでいく。  槍衾(やりふすま)をものともせず、敵兵の隊列を切り崩して進むアレクを見て、ルドルフが呟く。 「・・・アイツ。なかなか、やる!」  槍衾(やりふすま)が容易く突破され、アルムフェルトは驚愕する。 (あれが帝国の帝国騎士(ライヒス・リッター)か!!)  アルムフェルトが兵士達に指示を出す。 「怯むな! 取り囲め!!」  二人の兵士達がアレクの背後に回り込むと、二人の目前に突然、ルイーゼが現れる。  ルイーゼは、潜伏スキルでアレクの背後に潜み、アレクの背中を守っていた。  突然現れたルイーゼに兵士達が驚く。 「「女!?」」  ルイーゼは、素早く一人の兵士の懐に飛び込むと、抜き身のショートソードで兵士の顎を下から突き立てる。  魔力を帯びたショートソードの剣先が兵士の頭の上まで突き抜け、刺された兵士は一瞬で絶命する。 「くそがぁ!!」  もう一人の兵士がルイーゼに向けて剣で水平に斬り付ける。  ルイーゼは、左の手甲の鉤爪で剣の一撃を受け止めると、右の手甲の鉤爪を兵士の顔に突き立てる。 「ぎゃぁあああああ!!」  兵士は叫びながら後ろに倒れる。  兵士達を倒したルイーゼは、再びアレクの背後に寄り添う。 「貫通雷撃(ライトニング)!!」  アレクの前に集まっていた兵士達が電撃魔法による攻撃を受け、倒れていく。  アレクの右側にルドルフと雷撃魔法を放ったグリフォン小隊の魔導師の女の子の二人を先頭にグリフォン小隊が現れ、左側にフレデリクを先頭にフェンリル小隊が現れる。  ルドルフがアレクに告げる。 「行け! アレク! 雑魚は引き受けた!!」  フレデリクも口を開く。 「敵の指揮官は目の前だ! 行け!!」  アレクが二人に答える。 「すまない! ここは任せたぞ!!」」  アレクとルイーゼは、スベリエ軍の兵士達を突破し、王太子アルムフェルトと取り巻きの士官達の元へたどり着く。
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