Prisoner Of Love

12/17
前へ
/49ページ
次へ
その日も行雄のカバンを漁っていると、カバンの横に小さく四つ折りにされた紙を見つけた さっきカバンからものを出す時に落としたのだろうか 手を伸ばしてその紙を拾い上げる ゆっくりと開いていくと、その紙はメモ用紙のような感じだった そこには女の子の可愛らしい字で ”キャンベルで待ってるね” と記されていた キャンベルで…待ってる… 待っているという事は、二人は待ち合わせをしているという事だ ああ… この紙…メモ用紙のようなものに書いているという事は きっと二人はとても近しい場所に居て メモ用紙を渡せる環境にある だって、携帯と言うものがあるのに、敢えてメモ用紙で書くという事は、携帯で連絡を取らなくてもいいという事でもある もしくは取れない 取るのを避けている まあ、敢えて、手紙で連絡を取るというのが新鮮という場合や、手紙と言う手描きのやり取りが好きな人もいるとは思う でもこれは、メモ用紙 要件をサッと伝えるもので、要件をサッと伝える場所にあるもの とは言っても、メモ用紙を常日頃持ち歩いてる人もいるだろう そう言う人が、待ち合わせ場所を書いて、メモ用紙を渡す環境や場所、シチュエーションって…? 考え出したらきりがない 全ては予測であり、答えはない 答えはこの目で見たもののみ 行雄が出かけた後の日中、寝室のパソコンを開き、ネットでキャンベルと検索窓に打って、検索をかけた しかし、キャンベルだけだと中々上手くヒットしない もう少し絞らないとダメか… ふと考えて、スペースキーを押した後、新宿と入力した …これか 検索結果をゆっくりスクロールしていく 同じ名前、住所の色々なサイトが出てくるので、場所はここで間違いないのだろう それは 新宿西口の、行雄の職場の丁度裏手にある、バー 手紙の主は かなり行雄の職場から近い場所を指定している これだけ行雄の職場から近い店を、密会場所としている事に驚いた 女はかなり、神経が図太い女 密会している事が行雄の職場にばれてしまうかもしれないと…私が行雄の職場に行ったら気付かれてしまうと…考えないのだろうか それとも… そんな事すら気にしないほど、気にならないほど…行雄に夢中なのか 或いは単純に… 行雄と同じ、職場のやつか… 若しくは 行雄が場所を指定したと仮定した場合 自分自身の移動が面倒だから、職場近くのお店を指定した筋がある しかも、バー 営業時間は夜三時半までとなっていた 仕事終わり 深夜までやっているバーで…男女が、密会 想像しただけで、気持ち悪いし、いやらしいし…気持ち悪い 仕事が終わった後… 二人で夜中まで… なにやってるの? 私には秘密で… そう思ったら、そのバーに殴り込みに行きたい衝動に、一瞬駆られた ここに ここに行ったら… 私は二人に会えるのだろうか 女狐に会えるのだろうか… でも会ったところで、私はどうすればいいのだろう 女と、行雄の驚いた顔は想像できる でもその先が…頭の中に思い描けない それに会ったところで 現実を直視したところで 私はそれを…受け入れる事が出来るのだろうか… 静かにパソコンを閉じた 私は そこまでの度胸が… 覚悟が、ない そうしていくうちに、次第に私は、カバンや財布の状況証拠集めから移行して… 彼の携帯に手を伸ばした それは 触れてはならない 禁断の書 開けてしまえば、もう元には戻れない どんどん…深みにはまっていく
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加