Prisoner Of Love

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その目線が酷くゾクゾクして、私を射貫いた 「いこっか」 「あ、うん…」 程よく締まった小尻を揺らし、先陣を切るあや子 「近くに美味しいパティスリーがあるからそこにする?」 「…うん、わからないから任せるよ」 新宿は夫の職場がある場所だが、あまり新宿の地理には詳しくないのでそう言った 言われるがまま着いていく私 あや子の後姿を見ながら… 三年で、こんなにも変貌した彼女を目の当たりにして、動悸が激しくなった 私は今、彼女にどんな風に写っただろう 私は彼女みたいに…三年前と変わっているだろうか なんだか急に疎外感が襲ってきた 「ここのケーキはマンゴーがオススメだよ」 「そうなんだ、じゃあ私、それにしようかな…」 「すみません、マンゴー二つ」 あや子はてきぱき仕切ると席に着いた 昔は…何をするのでも私と一緒で、どこいくにもニコイチで、同級生や友達に 「二人は仲いいね」 なんて言われて… 何か決めるにもお互い優柔不断で、話し合って決めるくらいだった なのに… 「それで…?」 「え?」 「なんか話しあるんでしょ…?」 あや子は鋭い 単刀直入に聞いてきた 私はうーん、うーんと唸りながら、中々話せずにいた 「ご主人のこと?」 「…うん、まあそう…なんだけど」 あや子に誘導されて、やっと言葉を発する 「行雄が最近、忙しくて、中々帰ってこない日が続いてて…でも私のこと嫌いになったわけじゃないみたいだから、どうしたらいいのかわからないの…」 「…そう」 あや子はケーキを突きながら、目線は私から外さない 「家の中にぼーっといるから、余計なこと考えるんじゃない?パートとかして外に出てみたら? ご主人の許可もらってさ」 成る程 家にずっとこもってばっかいるから、そんなこと考えちゃうのかな 確かに、仕事辞めてから子供がいるわけでもないし、趣味があるわけでもないから、家事しかすることもない そうすると、余計なことばかり考える時間が出来ちゃうんだ 「そうだね、今晩あたり行雄に相談してみようかな… なんかこんなくだらない話なのに、わざわざ時間割いてくれてありがとうね、あや子」 「全然、寧ろ私なんかが奈津美の役に立てたかと不安だけど」 私は大きく首を振った 「不安だったの 子供いるわけじゃないから、ママ友もいないし、ご近所付き合いもないし、そう考えたら私… 周りに友達なんかいないなと思って… 孤独っていうのかな… すごく心細くなっちゃって… でも あや子がいてくれて よかった…」 「誰だって不安だよ 私も、このままでいいのかなって…将来不安になる」 視線を逸らしたあや子は、あの日私と一緒にいたあや子の顔だった 「でも、この街じゃ、鎧着ないと食い潰されちゃうからね」 そう言ったあや子の顔は、またさっき出会った時の顔に戻っている そこには、やっぱり私の知らないあや子がいた それからあや子と別れた私は、せっかく新宿まできたので、夕飯の買い物を済ませることにした 今日は行雄の好きなビーフストロガノフにしよう 新宿通りと明治通りが交差する地点にある百貨店まで足を伸ばし、地下の食品売り場でワインを選んだ
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