Prisoner Of Love

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自宅に帰って夕飯の支度を済ませたが、行雄から連絡はまだ入ってない 時計は八時を回ったところ 接待してるのかな 連絡一本くらいしてもいいのに… 鳴らない携帯を握り締めて、テレビ番組を流して見た 感情移入出来ないドラマを眺めていたら、気付くともうシンデレラの魔法が解ける時間 朝、連絡するねって約束も守られないまま 日付が変わる 行雄のために作った料理が、冷めてゆく 諦めて就寝しようと思うも、ふと気になり、カーテンを開けてバルコニーに出ると、下の様子を眺めた すると、丁度タクシーが私たちのマンションの手前の道に止まり、ハザードをたく 周りは暗くて見えないが、人が二人降りて、そのうち一人がまたタクシーに乗り込み、そのまま一人を置いてタクシーは走り去った 暗がりのその人は、しばらくタクシーを見送っていたが、ふと人影が私たちの住むマンションに近づいてくる マンションの灯に照らされた人物は、行雄だった 私はカーテンを閉めてリビングを通り過ぎ、玄関に向かった 鍵が開く音がして行雄の顔が見えると、帰ってきて嬉しい気持ちと、猜疑心による不安とで心臓が跳ねる 「わあ、びっくりした!なんだ起きてたの…」 行雄は顔が火照り、微かにお酒の匂いと…行雄じゃない香水の香りがした その色々な香りで、私は咄嗟に問い詰める 「さっきの人誰…?」 「…え?」 「タクシー、一緒に乗ってた人…」 行雄は一瞬、息を飲んだように固まっていたが、直ぐに私にビジネスカバンを預けると、酔っているようなのに饒舌に話す 「さっきのは上司だよ 帰りの方向一緒だったし、酔ってたから心配だって言って、途中まで乗ってきただけ それが何かおかしい…?」 行雄は何故かイラついたような低い口調に、靴を乱暴に脱ぎ捨て、私の前を通り過ぎた 「…別に なんか、入ってきた瞬間、行雄じゃない匂いしたから」 微かに行雄の肩が揺れた気がした 行雄は振り返ると、接待でクラブに連れて行かれて、そこの誰かからの移り香でしょ、と吐き捨てるように言った 私は行雄の靴を揃え、後に続く キッチンで、水を飲んでネクタイをゆるめている行雄 「ご飯は…?」 か細く聞いた さっきから、話し掛けるなって雰囲気で、萎縮してしまう 「食べてきた…明日早いし、もう寝るわ」 そういって、行雄は寝室に行こうとした 私はあや子に言われたセリフを言う 「…私パートしようかな」 「へえ…なにするの?」 行雄は振り返り、食い付いてきた 「えっ…何するって…まだ決めてないけど…」 「ふーん…、まあ気晴らしになっていいんじゃない?家事も出来る余裕があったらやったら…?」 行雄は私の言葉を後押しをするような言い方をした
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