Prisoner Of Love

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そんなある日 「ただいま」 「おかえり…なさい… 今日は随分早いのね!」 久し振りに行雄がいつも通り帰って来て、何となく上機嫌になる 「ん?そうか? あ、そうだこれ、お土産」 手渡されたそれは… 「え!ケーキ! すごく美味しそう!どうしたのこれ?」 「帰宅する時、美味しそうだから買ったんだ 奈津美ケーキ好きでしょ?」 「わあー、うん、ありがとう! 今お茶入れるね!」 私は久々の行雄からのプレゼントとセリフにウキウキして、水を沸かしてケーキに手をかけた 「俺はいい、先に寝る」 「えっ、もう寝るの…?」 「ちょっと今日は疲れたんだ、お先に」 そういうと行雄は先に寝室へと向かった なによ… そう思いながら独りで食べようとケーキを開けた ケーキは美味しそうなマンゴーのフルーツケーキ あれ… このケーキどこかで… 水の沸騰する音がして、ケトルから湯気が立つ 「あっいけない、茶葉用意してない」 それからリビングで寝る支度を済ませ、ゆっくり寝室に入った 行雄は背を向け寝ている 起こさないよう静かにベッドに入ろうとした時、行雄のカバンから紙束がはみ出ているのに気付いた 「ん?」 何となく気になって手を伸ばし、カバンから紙束を取り出す カバンの奥にしまってたのか、変に折り皺のついたその紙は、横浜のリゾートホテルの領収書だった …え? 宿泊…人数…二人… 一気に心拍が上がり、変な汗が出てきた 爪の先まで冷たくなっていくような感覚 「なに…これ…?」 思わず独りごちる がさっ、と布団が擦れる音がして、私は咄嗟にカバンの中にその領収書を突っ込んだ 行雄は寝ている 私は寝室を静かに出た 足がおぼつかない ふらふら目眩と、胃がぎゅうっと誰かに掴まれたかのように、痛い 吐き気がする トイレに駆け込んだ さっきのケーキを全部便器にぶちまける そのまま、私はリビングのソファに倒れ込んで、そこで記憶は途切れた 翌朝、目覚めるとタオルケットがかかっていた 時刻は午前10時 私はタオルケットを乱暴に剥ぎ取る 口はザラザラして酸っぱい匂い ふらふら立って、洗面所に行って顔を洗って歯を磨いた またソファに腰掛け、頭を整理する ホテルの領収書 宿泊ってことは泊まったんだよね 人数は二人だから、誰かと 日付けは先月、火曜、深夜 その日は私の給料日で 行雄が帰って来なかった日 全てが出来過ぎている 合点がいく ピースが繋がっていく 間違いない 行雄には女の影
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