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 総馬は両手を前に出すと、そのまま塔子の体を抱きしめる。なんて小さくて柔らかい体だろう。 「賭けなんかしなくても、俺にとって日比野ちゃんが大切な存在だってことにちゃんと気付いたよ」 「……嘘よ。こんなに長いこと気付かなかったじゃない」 「あはは。それは面目ない。でもさ、俺の言葉で笑ってくれて、趣味も一緒に楽しめる人、日比野ちゃん以外に思いつかない。それに……」  首を傾げた仕草が可愛くて、総馬は思わず胸がキュンとする。なんで友達で我慢出来たのか不思議で仕方ない。 「日比野ちゃんの笑顔が大好きなんだ。だからいつも君を笑顔にしたいって思ってた。嘘じゃないよ」  彼女の涙を指で拭う。やっぱりキレイだ。 「俺、男女問わず、こんなに気が合う人と出会えたことがないんだよ。だから気が合う=(イコール)友達って勘違いしちゃったんだよな。でも最初に飲みに誘った時は、ちゃんと下心あってのことだから! 告白の前にゲームしたのがまずかった……」  すると総馬の腕の中で塔子が吹き出す。あぁ、やっと笑ってくれた。 「友達で満足したのに、いきなり恋愛の対象として復活するの?」  総馬は腕の力を緩めると、塔子の顔をじっと見つめる。 「ベタだけど、日比野ちゃんが誰かのものになると思ったらモヤモヤしたんだ。でも大事な友達を失うのも嫌でグダグダしてたら、篠田に喝を入れられた」  その時になって、総馬はここが歩道で、道を行き交う人たちが二人を見ていることに気付いた。  塔子の手を取って立ち上がると、駅に向かう人の波に逆らうように横断歩道を渡り、オフィスビルの裏側へと回る。  人通りがほとんどないその場所は、今は二人だけの空間だった。  総馬は振り返ると、改めて塔子のワンピース姿を見て鼻血が出そうになる。 「日比野ちゃんのワンピース姿、めちゃくちゃ俺のツボなんだけど」  頬を赤く染める塔子を見て、総馬の胸も熱くなった。
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