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遺言のつもりで
洸太の母陽子は幼い頃からの息子の奇行で精神を病み、父忠良は我が子の凶行を恐れて二十年前に家族全員で死のうとしたが、洸太だけが生き残った。
「私もいい歳だし、死ぬ前に一つお願いがあるのよ。別に大したことじゃないから、コウタさん受けてくれないかな?」
貴代はこの時、人生最後の賭けのつもりで洸太を真っ直ぐに見据えて言葉を投げ、もしナイフで刺されて死んでも悔いはないと訴えた。
「いやなら、私をそれで刺しなさい」
「突然、何ですか?」
ナイフを持ったまま洸太が睨んでいるが、貴代は数日前に孫娘の授業参観に行った時の事を思い浮かべ、『サイコパスと女子高生』というミスマッチが成り立つのか、期待を込めて告げる。
「授業の一環として、私の孫娘が友だちを連れてこの屋敷へ遊びに来たいと言っているの。もちろん特にもてなす必要はなく、単に家を見学させて質問に答えてくれればいいから。心良く招待していただけませんか?」
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