社会貢献

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 貴代がキッチンで料理をして美代子と理恵がダイニングテーブルに運び、夫の真司がビールを飲み始めて食事も進む、家族団欒の頃合いを見計らって、予め話してあった理恵の依頼を貴代が切り出す、 「それでどうかね?理恵は友だちと三人だけで訪問したいと言っているんだ。私は心配だから、付き添うと説得したんだけどね」 「だって、おばあちゃんいたら本心は見せないと思う。だって、大人社会から爪弾きにされたわけでしょ。きっと私たちなら心を開く」 「でも危ないわよ。配達員でさえ怖がっているのよ。女子高生に興奮して、何をしでかすかわかったもんじゃないわ」 「大丈夫。街に広まったサイコパスの噂を私たちが払拭してやるんだ」  理恵が拳を握って声を上げ、美代子が呆れて夫の意見を求める。貴代は頼りない旦那だと思っていたが、意外にも鋭い意見を聞いて見直した。 「前から気になっていたけど、なぜお母さんはサイコパスに親身なのですか?乳母といえど、本当の息子のように心配している。何か理由があるのでは?」 「ええ、美代子にも話してないけど。私、いい歳だったのに妊娠してね。結局、死産だったんだけど、お腹の子に……双子座の赤ちゃんと一緒に蘇るからと言われたの。夢みたいな話しだけど、鮮明に赤ちゃんの声がお腹から聴こえた」
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