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呼ばれた気がして振り返える。
目にうつるのは久しぶりの実家だ。もちろんサラナお嬢さまは居ない。
―どうも調子が微妙だな
こたつに入っていると時の流れが止まっている気がする。
『いいエヴァン、1日1通読んで毎日手紙書いてね!』
冬休み前の教室で渡された手紙の束はこたつの上にある。
昨日のことなのに遥かかなたの記憶のようにも思える。
―返事がないとものすごく怒りそう
今日の分だけ山から取り開いてみると
エヴァン元気?もちろん私は元気よ!
今日はお父様とパーティ用の洋服を買いに来てます(赤い着物も素敵なんだけど紫のドレスのほうが大人でしょ)
ランチはいつものお店。
午後はお稽古三昧よ(は~)
エヴァンの今日の1日を細かく教えてね(それだけが冬休みの楽しみなんだから)
じゃまたお会いしましょう
追伸―おやつにもちっとしてとろ~りとしたのが食べたいのよ。
「餅のお菓子か」
僕の声に近くにいた母さんが何か言ってる。
やっと復活して動いた僕に頼みたいことが多いらしい。
手紙の内容をがんばって考えてなんとか夕方に出しに行けた。
親愛なるサラナお嬢さま
僕の家にはこたつがあり、その魔力は絶大です。きっとお嬢さまなら一瞬でとけることうけ合いですね。
追伸―もちっとした餅のおやつを探しておきますよ。お楽しみにお待ちください
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