7通の手紙

1/1
前へ
/1ページ
次へ
呼ばれた気がして振り返える。 目にうつるのは久しぶりの実家だ。もちろんサラナお嬢さまは居ない。 ―どうも調子が微妙だな こたつに入っていると時の流れが止まっている気がする。 『いいエヴァン、1日1通読んで毎日手紙書いてね!』 冬休み前の教室で渡された手紙の束はこたつの上にある。 昨日のことなのに遥かかなたの記憶のようにも思える。 ―返事がないとものすごく怒りそう 今日の分だけ山から取り開いてみると エヴァン元気?もちろん私は元気よ! 今日はお父様とパーティ用の洋服を買いに来てます(赤い着物も素敵なんだけど紫のドレスのほうが大人でしょ) ランチはいつものお店。 午後はお稽古三昧よ(は~) エヴァンの今日の1日を細かく教えてね(それだけが冬休みの楽しみなんだから) じゃまたお会いしましょう 追伸―おやつにもちっとしてとろ~りとしたのが食べたいのよ。 「餅のお菓子か」 僕の声に近くにいた母さんが何か言ってる。 やっと復活して動いた僕に頼みたいことが多いらしい。 手紙の内容をがんばって考えてなんとか夕方に出しに行けた。 親愛なるサラナお嬢さま 僕の家にはこたつがあり、その魔力は絶大です。きっとお嬢さまなら一瞬でとけることうけ合いですね。 追伸―もちっとした餅のおやつを探しておきますよ。お楽しみにお待ちください
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加