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コバルトとシャインは、マルジャーラ国の城下町まで来ていた。子供の頃よく父について歩いていたコバルトには、さして代わり映えない風景だが、初めて訪れたシャインは、ザワザワと騒がしい露店通りに目を輝かせていた。
コバルトは、先の道通りに見えるお食事処を指差しながら
「とりあえず、食事をすませてからホークおじさんのところへ行こうか」
っと、言って後ろのシャインに顔を向けたのだが……
「いないし……」
後ろには、道行く人々はまだらにいるがシャインの姿はどこにもなかった。
「はぁ、
さっそくかよ……」
コバルトは、いつもの事だと知りながらも肩を軽く落としたのである。
―☆―☆―☆―
シャインは、先ほど砂漠で見かけた行商人を見かけてついつい追いかけてしまっていた。
「ねぇ? おじさんその大きなずだ袋の中には何が入っているの?」
好奇心のかたまりであるシャインは、そう行商人のオヤジに話しかけた。
「これか? これにはな、世にも珍しい生き物が入っているのさ。中身は言えないがこれから、こいつを国王様に献上するのさ。そうすれば、俺の懐は豊かになるからな。グフフッ お嬢さんを一晩買うことも~~……」
『うえ~~ 気色わるっ!! 本気で言ってんのかしらこのオヤジ……』
シャインは、顔をひきつらせた。
「……たす……て」
「? 今、何かこの袋から聴こえて……」
シャインが、袋に手をかけようとした時
「助けてって言ったんだよ。そのずだ袋は……」
っと、シャインを探しに来やっと見付けたコバルトは、後ろから言った。
「お前……本当綱でも繋げるか?」
コバルトは、呆れ顔である。
「ゴメ~ン。コバルト、後でおわびするから~怒んないで~」
そんな、やり取りを繰り広げていると行商人の袋の紐が重みに耐えられずに切れてしまい封がとけて中身がひらいてしまった……
「しまったッ!」
行商人は、焦った。
袋からは、少女の姿をした竜が出てきた。少女は、銀髪に朱色の瞳をしており背中には竜の羽があった。
「竜の人身売買か……」
コバルトは、ジロッと行商人を睨み付けた。
「なんだよッ! 別に禁止されてはいないだろッ! こいつは、親に売られたんだしよッ!」
っと、行商人は言った。
「しかし、助けてって聴こえたぞ?」
「そんな訳あるかッ! こいつは喋れないんだしな」
……
『なるほどな……』
コバルトは、地面で泣き腫らした瞳を光らせている少女を眺めてから、ヤレヤレっと頭をかいてから
「こいつは、いくらなら売るんだい?」
っと、行商人に言ったのである。
「あん? お前が買おうってのか? まぁ、金貨、嫌ッ! 宝石十くらいなら売っても良いぜ~」
「コバルトッ! この子買うの?!」
シャインは、コバルトの言葉に目を丸くした。
「シャインは、ちょっと黙ってて」
「わかりました。良い値で買いましょう」
コバルトが、ニコニコと笑って行商人に支払いをしたのでオヤジの方は、ポカンと口をしばらく開けたのである。それは、そのはずで宝石は一つでもかなり大金なのである。
っが、しばらくたつと、ニンマリと満足そうにそれを受け取るとオヤジは
「まいど~」
っと、行ってさって行った。
「コバルト……ふっかけられたわね~あんな奴ぶっ飛ばしときゃ良いのにッ!」
シャインは、もういなくなった行商人にあっかんべーして言った。
「争いは嫌いなんだよ」
「まっ、貴方らしいけど」
シャインは、コバルトの腕に絡みついた。
すると全然声をはっさなかった竜の少女が、かそぼい声で
「ご主人様……」
っと、言った。
「やっぱ、喋れたんだな、お前。頼むからご主人様はやめてくれないか?」
少女は、少し考えてから頷きそして、もう片方のあいていたコバルトの腕にそっと絡みつき
「なれば、優しい旦那様ですね」
っと、可愛く微笑んだのであった。
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