カムイ岬の雪 三、

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カムイ岬の雪 三、

   ここで男は気付いた。  北条は上総氏の生き残りだった儂等は、動向を見るために泳がされていたのだ。遠い蝦夷にて安東氏に仕えよ、というのも儂等を鎌倉から追放する為の口実だった。追放して、目の上のたんこぶだった儂等を討ち果たしてしまうつもりだったのだ。  謀られた……っ!!  得宗のヤツらのやりたい放題じゃないか。こいつらによって討ち果たされた武士(もののふ)達はいくつもあったじゃないか!  儂も関わっていた事もあった。主君であった上総もそうじゃ。  そもそも、鎌倉に関わるのが間違いだったのだ。  あとは、生き残った達がどうにでもする事であろうなあ──────。  もう良いわ、ここまでかのう……。  そうではない!  俺が、何故にこんな羽目に遭わねばならないのか。  何故にこんな夜襲に、俺が遭わないとならぬのか。  何故にこんな果ての地で……。  男に、無念の気持ちがよぎった。  男が歩く先に海が見えた。  冬の岬に、冬の海。  見えていた海は天気が荒れていて、到底舟なんか出せるようなものではない。  むしろ、遠くに見える岬は切り立った崖になっており、降りないと海に出られそうも無かった。  追手はいずれ来るであろうな……。  来たら斬り死にでもするか。いや、これではムリじゃな。  男が杖にしていた太刀は、抜き身のまま刃こぼれしてしていた。こんなもので戦など出来るわけないわ。 何を馬鹿な事を考えているのか。  もう……いいかのう。  男は、死に場所を求めていた。  今更、館の方に戻っても奴らによって殺されてしまうがオチだ。太刀は刃こぼれして使えそうもない。だったら短刀があるから自分で好きな場所で、と思っていた。
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