カムイ岬の雪 八、

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カムイ岬の雪 八、

 うおおおおぉぉぉぅぅぅ……っ!   うおおおおぉぉぉぅぅぅ……っ!  再び狼は、雪が降る中で、張り裂けそうな遠吠えを上げていた。  泣き叫びのような、叫び。  それは遠吠えというより、号泣にも見えた。  おおおおうううぅぅぅぅ────…………っ!!  おおおおうううぅぅぅぅ────…………っ!!  目の前に立つ岩には、もう誰もいなかった。  それでも、狼は海の向こうに向かって、遠吠えを上げ続ける。  また一人お前の方に、逝ったぞ。  何故に俺には、迎えを寄越してはくれぬのか。  生きる意味無き俺を、いつまで生かすのであろうか。  お前の元に、添い遂げたいのに────。  俺に迎えを、下され────。  狼の姿が、いつの間にか人の姿になっていた。  彼もやはり、崖の下に消えた者と同じく、髪も衣服もボロボロになっていた。  やはり、戦で逃げてきたのか全身傷だらけだった。  違うのは……。  武士(もののふ)とは違った、別の民族衣装である事。  彼は……、  この蝦夷で、(ヤマト)から来た軍勢によって、彼を含んだ一族郎党全て殺されていたのだ。  この地で先祖から受け継いだだけなのに……。  儂等は、何故こんな責め苦に遭わねばならぬのかっ!  彼の魂だけが、この地に彷徨っていたのだ。
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