おわりとはじまり Side夜兎

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おわりとはじまり Side夜兎

瑠璃先輩と流明が付き合ったらしい。2人とも優しいし、片方は鈍感だからすぐに知らせてくれた。(やっとか…)とすこし安堵してしまった時点で私の負けは決まっていたようなものかもしれないと思ったけど。不思議とその時は涙は出なかった。なのに何で今更涙が止まらないんだろうなぁ… 今日は誰とも会いたくないし、親には体調が悪いって言っておいた。今日だけは一人っきりで泣「夜兎〜!入るぞ〜!」 「未史君!?………女の子の部屋に勝手に入るのはデリカシーが無いよ。帰って。」 一瞬取り乱したけど、自分でも驚くほど冷静に対応した。私ってこんな声出せたんだ… 「お前…あれだけ流明の家に突撃しておいてそれはねぇだろ…」 「……もうしないもん。」 傷心中の私に会いに来て、よりによって流明の話するとか、もっと気を使えないの?だからモテないんだ。そもそも私は出ていけとさっき言っ「好きだ。夜兎。」 「……は?ふざけないで!!私は流明が好きだったの!!それくらい未史君なら分かってるでしょ!それとも何?今なら私くらいなら落とせると思ったの?」 未史君がこういう人だとは思わなかった。昔から良くしてくれてお兄ちゃんくらいには思ってたのに。今日は本当にツイてない。 「そりゃもちろんお前の好きな人くらい知ってるし、お前を落とすなら、今しかないだろうとは思った。」 シンプルに腹立つ。でも、それ以上に分からない。その無駄な正直さも、私が苛立つであろう言葉を選んで話すこの態度も、今までで一番未史君の事が分からない。 「だってお前が流明のこと好きなときに告白しても絶対振り向いてくれねぇじゃねぇか。お前と同じくらい俺だって待ってたんだよ。」 感情的な私をあくまで論理で受け止める未史君の態度を受けて、私のやり場のない苛立ちが霧散する。 「えっと…というか未史君って瑠璃先輩が好きなんじゃないの?」 いつも瑠璃先輩と話しているし、てっきりそうなのかと思ってたんだけど… 「全然違うが?そもそも俺が流明に勝てると本気で思ってるのか?俺が夜兎のこと好きだってバレたら、お前わざわざ俺のこと振りに来るだろ。だからカモフラージュだよ。演技上手だろ?(お前にしか通用してないけどな…)」 未史君らしいネガティブな考え方に思わず笑いがこぼれた。 「私は別に未史君のこと「未史でいいよ。」……未史のこと好きじゃないけど……もしも失恋で弱ってる私を優し〜く抱きしめてくれる人がいたら、つい好きになっちゃうな〜。」 もっとしおらしくするつもりだったのに、なんでこんなこと言ったんだろう。(照れてるわけじゃないし!!) 「それだけ言えたら大丈夫だろ。いいから早く昼飯でも食べてこい。何も食べてないんだろ?」 何なのこいつ!?私がここまで分かりやすく誘ってあげてるのに! …まぁ確かに朝から何も食べてなくてお腹は空いてたから大人しく自分の部屋から出ようと立ち上がった。 その時、私の後ろから何かが触れた。たっぷり1秒くらい経ってから、ようやく自分が抱きしめられていることに気付いた。背中に未史君…未史の体温を感じた。未史がこれ以上ないほど近くにいるのに、どこか離れてるみたいでなんだか現実味が無いように思えたけど、一つだけ確かなものを挙げるなら、私と違ってゆっくりとした心音も聞こえた。これだと私だけドキドキしてるみたいじゃん。腹立つなぁ。そう思った私は未史の手を払った。 「やっぱり未史は駄目!まず胸元に手が当たってるし!それ人によっては普通にセクハラだからね?………仕方無いから私が女の子との付き合い方を教えてあげる!」 これが私なりの返事。いつもならこんなこと言わないのに、なんでこんなに回りくどいのかは自分でも分からないけど。 「あぁ!よろしく。」の一言で答えた未史はこれまでで一番格好良く見えた気がした。 「こいつツンデレかよ…めんどくせぇ…」 やっぱり今のナシ!! 小声で言ったからって許されると思うなよ!
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