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素直になれない二人の約束
「みーくん。テストどうだった?」
勢いでしてしまった約束への後悔と少しの恐怖を感じながら私はみーくんに聞いてみた。(ドキドキも期待もしてない!!)
「5教科90点超えの472点だ。……そうだ。ここでやってよ。」
高っ!!やっぱり本気出せばみーくんすごいんじゃん。…って、え?ここで?
私たちがいるのは放課後の図書室。窓は高いから外から見えることはないだろうけど誰も入ってこないとは言い切れないような場所。でも断ったら一生言われ続けそうな気がする。それに……嫌な訳じゃないし。
「はぁ…ほっぺでいいでしょ?目閉じて。」
「は〜い」
「絶対開けないで!!……はぁ」
「おいおい。お前が頑張れって言っておいて溜息かよ。ほら覚悟決めろ。」
なんでみーくんにそんなこと言われなきゃ……でもこういう時に茶化してくれるのはみーくんの好きなところの一つだと思う。
「キス待ちしてま〜す。」
やっぱり嘘!!黙れ!
顔を近づけるとみーくんの髪が目の前に迫ってくる。普段なら何も思わないのに、なぜかそれが恥ずかしくなって私は目を閉じた。その時、私の唇に柔らかい感触を感じた。
声にならないような声を出して目を開けると、さっきより少しだけ私に近づいた未史の右頬があった。
「あぁ、ごめん。ずっと目閉じてたから少しフラついちゃった。悪いな。」
半笑いで適当な事を言うみーくんの言葉で、私は頬を唇に当てられたことに気付いた。
(そこまでするならみーくんからしてくれたら良いのに…)
「……ん?なんか夜兎のスカート汚れてないか?」
あれ?来る前に見た目は整えてきたんだけど……
心臓が止まったかと思った。こんなにも心音がうるさいのに。一瞬で抱き寄せられた私の背に回された手の暖かさ、左の頬から感じる柔らかい感触、そのどれもが私の思考をショートさせるのに十分な破壊力を持っていた。
どれだけその状態だったのかは分からないけど未史の顔が離れていくときに私は、みーくんが性格以外は良い人だったことを思い出した。
「心の声が漏れてんだよ。バカ」
「え!?…えっと…本当に?」
「あぁ、さびしそうに『みーくんからキスしてよぉ…』って言ってたな。かわいかったぞ。」
「は!?そんなこと言ってないでしょ!そ、それにみーくんも私の胸に当たらないようにすごい気遣ってたの知ってるんだからね!すごい初心に見えて面白かった!」
え?言ってないよね?自分ではそもそもそんなことを言った自覚が無いからとても不安になる。
「逆に当ててもいいのか?」
「良いわけ無いでしょバカ!!」
ひとしきり言い合ったあと(私が一方的に言いくるめられてた気もするけど…)自分の赤くなっているだろう顔を隠すように図書室から出ていった。
「あ……」
「瑠璃先輩!?」
図書室の扉の裏に隠れるように座っている瑠璃先輩がいた。
「あ〜あ。バレたか。」
「流明もいるの!?というか…ふたりとも盗み聞きしてたの!?」
「いや、バッチリ見てたから盗み聞きというか普通に鑑賞してたぞ。」
「みーくんは黙って……え?もしかして…みーくん気づいてたの?」
「お前が可愛〜く恥ずかしがりながらキスしてくれる前からそいつらずっとそこにいたし、流明とは目があったよな。」
うるさい!一言多い!
恥ずかしさで頭がオーバーヒートしそうな私はこの3人から走って逃げ出した。
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「はぁ……」大きな息を吐いて俺はその場に座り込む。
「お前らは無理してカッコつけるからそうなるんだよ。もっといつも通りにしてればいいのに。」
「瑠璃に告白させたお前に言われると説得力が違うな。」
「グハッ……」
なぜか流明がその場に倒れ込んだが無視して立ち上がる。
「家遠いんだからもう少し倒れててもいいと思うけど…」
「倒れてるのは流明だけだわ。あと、お前は愛しのルア様の方を心配してやれよ。」
……うわ、こいつマジで流明の方行きやがったよ。心配しなくてもそいつ倒れてるフリしてるだけだぞ。
おい流明、お前そんな寝たフリしてんじゃねぇぞ。瑠璃もそんな慌てんな。
……そんなバカップルを置いて、俺は下校した。
余談だし絶対誰にも言わないが、その帰り道に久々に自転車で転倒した。
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