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あの日、二人が着ていた血や土で汚れたスーツやシャツは、全部ゴミ袋に捨てた。
アキのスーツは、イブの夜に初めて袖を通した新品だと言っていたので、一応聞いてみた。
破れたり、汚れたりしていたものの、ちょっと奮発して買ったと言っていたし、勝手に捨てる訳にはいかないと思った。
「あの日を思い出す物は全部要らない。
ハルが居てくれたらそれでいいから」
アキは掃除機のスイッチを止め、俯いたまま小さな声でそう答えると、またスイッチを入れて掃除を続けた。
そうだよな……
あの日の出来事は、蓋をして仕舞い込むだけじゃ足りない。
乱暴に捨てて、燃やして、跡形もなく灰になればいい。
そうして、新しい人生を二人で生き直して行く。
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