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1.輝ける場所
鳴り止まない拍手。
繰り返される「アンコール」の声。
一度目のアンコールはお約束。
ちゃんと会場一体になって盛り上がれる曲を残してある。
そして二度目のアンコールは、全員一列に並んで手を繋ぎ、その手を高く上げてからのお辞儀をして挨拶。
観客に手を振り、舞台袖へ捌ける。
この後、会場の電気が点き、同時にステージのライトが消え、終了を告げるアナウンスが流れる。
それを合図に、客たちも荷物をまとめ、通路へそして会場の扉へと向かい始める。
これが例年の流れ。
それが今年は違う。
観客は立ったまま席から立ち去ろうとせず、ひたすら「アンコール!」と連呼し、カーテンコールを続けている。
「これはお前らに向けられたアンコールだ。行って来い」
舞台袖に繋がる通路で、リーダーの青木壮介が、ハルとアキの肩を叩いた。
ハルとアキは顔を見合わせ、18人のメンバーの顔を見渡す。
全員が笑顔で頷いたり、親指を立てたり、青木に同意の意志を見せる。
もう一度、ハルとアキは顔を見合わせ、“ 別の意味の同意 ” を確認して、これから悪戯を仕掛ける子どものような笑いを浮かべた。
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