1.輝ける場所

2/3
前へ
/147ページ
次へ
「嫌です」 ハルの言葉にアキが続ける。 「全員で創り上げるライブだって言った筈だけど」 アキは、いきなり隣にいた最年少メンバー松下(まつした)有宇(ゆう)の手を取り、ハルは青木の手を取る。 「みんなが俺達の帰りを待って準備してくれてたから、俺達も無理なくできたんだよ!」 アキがそう言って松下の腕を引っ張ると、松下も何となく理解して咄嗟に隣に居るメンバーの手を取る。 「最後まで全員で仕上げなきゃ意味ないだろっ? ほらっ!みんなで!」 ハルもメンバー達に目配せをして青木の手を引き、青木も更に別のメンバーの手を取る。 そうして、ハルとアキが舞台袖に向かって走り出し、メンバー全員が他の誰かと手を繋ぎ、まるで芋ヅルのようになって、ステージに飛び出した。 湧き上がる歓声と拍手。 決められた立ち位置も、台詞も、音楽も、振り付けも、何もない。 ただ顔をクシャクシャにして笑い合うメンバー達の、心の底から嬉しそうな表情がステージ上にあった。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加