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「嫌です」
ハルの言葉にアキが続ける。
「全員で創り上げるライブだって言った筈だけど」
アキは、いきなり隣にいた最年少メンバー松下有宇の手を取り、ハルは青木の手を取る。
「みんなが俺達の帰りを待って準備してくれてたから、俺達も無理なくできたんだよ!」
アキがそう言って松下の腕を引っ張ると、松下も何となく理解して咄嗟に隣に居るメンバーの手を取る。
「最後まで全員で仕上げなきゃ意味ないだろっ?
ほらっ!みんなで!」
ハルもメンバー達に目配せをして青木の手を引き、青木も更に別のメンバーの手を取る。
そうして、ハルとアキが舞台袖に向かって走り出し、メンバー全員が他の誰かと手を繋ぎ、まるで芋ヅルのようになって、ステージに飛び出した。
湧き上がる歓声と拍手。
決められた立ち位置も、台詞も、音楽も、振り付けも、何もない。
ただ顔をクシャクシャにして笑い合うメンバー達の、心の底から嬉しそうな表情がステージ上にあった。
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