6.Flower language

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3月14日。 某撮影スタジオ。 光るフラッシュと、カメラのシャッター音が響いている。 ファッション雑誌、春の発売予定号の撮影。 ハルは表紙と巻頭数ページを飾ることになっていた。 ミントグリーンのジャケットに薄いブルーのデニム。 アイボリーの少し光沢のある生地に、くすみピンクや薄い黄色などの小花があしらわれたシャツ。 いかにも春らしい。 この時期はいい。季節の先取りもワクワク感があって。 最悪なのは、真夏に秋号の撮影で、セーターや厚手のジャケットを着せられる頃。 顔に汗かく訳にいかないし、大変なんだよね… そんな事を考えてると、アシスタントさんに花を渡された。 三本のピンクのチューリップ。 花びらの先が少し白味がかった薄いピンクがとても清楚だ。 可憐な花の匂いに誘われ、ハルは鼻を近づけ頰を綻ばせた。 チューリップを渡したアシスタントの女性が、去り際に何故か頬を染め照れていた。 「こっち目線下さい。はい、じゃ、ちょっと春っぽい感じの笑顔でお願いします」 カメラマンの注文を理解し、ハルは緩くふわっとした笑顔を向ける。 「はい、横顔行きますね。目線伏せて、花を見る感じで口元笑って。あ、いいですね〜 じゃ、次、風 当てまーす。 あ、花、回収してね〜」 カメラマンはハルに声を掛けてから、アシスタントにそう言うと先程の女性が花を受け取りに来た。 送風機の羽根が回り始め、無風状態だったスタジオの空気が流れ始める。 眩しいライトの中、ハルがジャケットの前の合わせ目辺りを、右手で掴んで広げるようにすると、花柄シャツの裾が風に揺れる。 野原の小さな花たちが、風に揺れるのを太陽が照らしているようだ。 ライトに晒され熱を帯びた身体に風が当たり、その爽快感にハルの笑顔も全開で咲いた。
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