初日

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初日

翌朝、朝食が終わると看護師が、初乳を飲ませるために 片腕に赤子を抱いて部屋に入ってきた。 私は、抱き方もわからずおろおろしてると 「大丈夫。意外と丈夫なものよ」 笑いながら私に赤子を託す。 「ほら“おっぱい”あげてみて」 と言いながら私の隣に座る。 私は、妊産婦教室で習った記憶を頼りに 乳房を拭き赤子を迎える。 赤子は、口を半開きにしつつ乳房を探し口に含む。 吸われてるのか吸われてないのか、 力が弱くわからないが、看護師は 「大丈夫、上手に飲んでるわ」 「本能って凄いですね。  教えなくっても飲むんだ」 「変な事言うわねぇ。  でも、そういうモノだって。  また夕方、様子を見に来るから」 そう言って、赤子をベッド脇の小さな箱に置いて ナースステーションに帰って行った。 赤子の顔を見た時私は、激しく後悔した。 (遺伝子って怖いわ。姑の顔に似てる) 複雑な思いで私は、ベッドに横たわりながら観察した。 お正月前の静かな病棟。 小春日和の昼の午後、看護師が再び現れ 「お母さんには、ゆっくり休んで貰わないといけないから  赤ちゃん、今晩は、お預かりしますね。  明日から一緒に過ごして頂きます」 と言い、ひょいと片腕に抱きあげ病室を出ていった。 (抱き慣れてる。ドラマとは違うのね) ドラマで見るシーンの再現度の低さに驚いた。 午後に夫が現れた。 夫は、 「知り合いに電話入れたから」 と言う。 そして暫くすると、大声を上げながら姑と舅が訪れた。 (今日だけは静かに過ごしたかったな) 私は、しらけた気持ちになった。
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